ニュースやSNSで話題の人工衛星を活用したインターネット接続サービス「スターリンク」。「そもそもスターリンクって何? 日本でも使えるの?」と疑問に思われている人も多いのではないでしょうか。この記事では、スターリンクのしくみや料金、通信速度、日本での契約方法についてわかりやすく解説します。

スターリンクとは?

画像: 画像:iStock.com/Jorge Villalba

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スターリンクは、アメリカの民間企業スペースXが運用する衛星インターネットサービスです1)。2020年にアメリカ、カナダ、イギリスなどでサービスが始まり2)日本でも2022年10月から利用できるようになりました3)

まずは、スターリンクについて詳しく見ていきましょう。

スターリンクは人工衛星を利用した衛星インターネットサービス

画像: 画像:iStock.com/3DSculptor

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衛星インターネットとは、人工衛星を利用した通信システムのことです。

〈図〉スターリンクの衛星インターネットサービス

画像: スターリンクは人工衛星を利用した衛星インターネットサービス

スターリンクの場合は、高度550kmの低軌道1)に配置した多数の人工衛星を利用することにより、高速かつ低遅延の衛星インターネット通信を実現しています。

上空に遮蔽物(しゃへいぶつ)がない場所に専用のアンテナを設置できれば、インターネットに接続できることが、スターリンクの大きな特徴です。アンテナの起動後、数分~10分程度で通信が可能になります4)

そのため、通信インフラの制限をなくす革新的な衛星インターネットサービスとして高い注目を集めています。なお、スターリンクのしくみについては、後ほど詳しく説明します。

スターリンクの料金は?日本で契約・購入する方法

画像: 画像:iStock.com/Rmcarvalho

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ここでは、日本でスターリンクを契約するための方法や料金プランを紹介します。

スターリンクを契約(購入)する方法

スターリンクの契約窓口は、個人と法人の場合で異なります。個人向けのサービスは、スターリンクの公式サイトから契約します。法人向けサービスは公式サイトの他、KDDI、ドコモ、ソフトバンクなど、通信キャリアのサイトからも契約が可能です。なお、通信キャリア経由で契約する場合は、事前に問い合わせが必要になります。

【個人向け】スターリンクの料金プラン

スターリンクの個人向けサービスには3つの料金プランがあります。

〈表〉スターリンクの個人向け料金プラン5)

プラン月額料金
レジデンシャル6,600円(モバイルデータ容量無制限)
ROAM1万1,500円(モバイルデータ容量無制限)
ボート海上で利用する場合
3万3,408円~(モバイルデータ容量50GBまで)

●レジデンシャル
自宅など決まった場所からスターリンクを利用する際に適した料金プランです。毎月定額で、データ容量無制限のインターネット接続が可能です。ただし、アンテナとルーターを契約住所以外に移動させて利用することはできません。

●ROAM
移動先でもスターリンクを利用したい場合に適した、データ容量無制限の料金プランです。アンテナとルーターを自由に移動できるので、自宅以外の場所はもちろん、たとえば走っている自動車の中でも利用が可能です。また、このプランは契約を一時停止させることが可能になっており、停止期間中は料金が発生しません。そのため、災害時のみ利用するといった活用ができます。

●ボート
レジデンシャルやROAMは、基本的に陸上からのみ接続可能ですが、ボートのプランを契約すると、水上(海上、川や湖などの内陸水域)でもスターリンクが利用可能になります。ただし、海上で利用する場合に限り、毎月50GBまで(月額3万3,408円の場合)という容量制限があります。また、ROAMの場合と同様、契約を一時停止させることが可能になっています。

参考資料

5)STARLINK

【法人向け】スターリンクの料金プラン

スターリンクの法人向けサービスの料金は、月額利用料とサポート料金の合計額になります。以下はソフトバンクの法人向けの料金プランの例です。なお、法人向けサービスは契約時に、初期費用として契約事務手数料なども発生します。詳しくは公式サイトをご覧ください。

〈表〉スターリンクの法人向けの料金プラン(ソフトバンク)6)

プラン月額料金
(データ容量(※)
基本サポート料金
/月額
スタンダードプラン
(陸上向け)
9,800円(40GB)~3万3,000円
ポータブルプラン
(陸上向け)
3万7,000円(50GB)〜3万3,000円
マリンプラン
(海上向け)
3万7,000円(50GB)〜4万4,000円

※:スタンダードプランとポータブルプランは、データ容量を超えると速度が遅くなります。マリンプランは、容量を超えると通信ができなくなり、容量の追加もできません。

●スタンダードプラン(陸上向け)
指定した場所にアンテナとルーターを設置して、インターネット接続を行うプランです。個人向けサービスの「レジデンシャル」に相当しますが、毎月利用できるデータ容量の上限を超えると通信速度が制限されます。

●ポータブルプラン(陸上向け)
アンテナとルーターを自由に移動させることができるプランです。個人向けサービスの「ROAM」に相当しますが、毎月利用できるデータ容量の上限を超えると通信速度が制限されます。

●マリンプラン(海上向け)
船舶にアンテナやルーターを設置し、水上(海上、川や湖などの内陸水域)でスターリンクを利用するためのプランです。個人向けサービスの「ボート」に相当しますが、毎月利用できるデータ容量の上限を超えると、インターネット接続ができなくなります。

アンテナの価格

画像: 画像:iStock.com/Tarcisio Schnaider

画像:iStock.com/Tarcisio Schnaider

スターリンクを利用するためには、専用のアンテナの購入が必要になります。ここでは、スターリンク公式の個人向けアンテナの価格について紹介します。なお、ソフトバンクの法人向けサービス用のアンテナの価格は公表されていないので、公式サイトから資料をダウンロードしてご確認ください。

〈表〉【個人向け】料金プラン別アンテナ価格(スターリンク公式)5)

プランアンテナ価格
レジデンシャル5万5,000円(標準)
ROAM5万5,000円(標準)
ボート36万5,000円(高性能)

個人向けのアンテナには、標準と高性能の2タイプがあり、ボートプランのみ高性能アンテナが必要です。アンテナは公式サイトで購入できます。また、標準アンテナであればコストコやauショップでも購入できます。

スターリンクの通信速度。他のインターネット回線との違いは?

画像: 画像:iStock.com/BrianAJackson

画像:iStock.com/BrianAJackson

ここではスターリンクの通信速度と、他のインターネット回線の通信速度を比較した際の違いについて解説します。

スターリンクの通信速度

スターリンクを日本で利用する場合の平均的な通信速度は、ダウンロード速度が約160~250Mbps、アップロード速度が約20~40Mbpsとされています6)。(2024年9月時点の数値)

ちなみに動画視聴はダウンロード速度3Mbps~25Mbps、オンライン会議はアップロード・ダウンロードともに10Mbpsほどあれば、ストレスなく利用することが可能とされています7)

ここで、スターリンクと他のインターネット手段の速度の違いを比較しましょう。

〈表〉スターリンクと他のインターネット回線の速度の違い

通信手段ダウンロードアップロード
スターリンク平均約160~250Mbps平均約20~40Mbps
光回線8)平均約220Mbps平均約200Mbps
5Gホームルーター9)平均約90Mbps-
ケーブルテレビ回線10)平均約78Mbps平均約11Mbps

どの手段も環境により速度が異なるので一概にはいえませんが、ダウンロード速度に関しては、スターリンクは光回線とほぼ同等です。一方でアップロード速度は光回線に比べてやや遅いようです。

スターリンクのメリット

画像: 画像:iStock.com/78image

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ここからは、スターリンクのメリットを紹介します。

通信インフラが整っていない場所でも利用できる

スターリンクは、上空に遮蔽物がない場所にアンテナを設置できれば、インターネットが利用可能です。そのため、山間部や海上など、通信環境が整備されていない場所でもインターネットを利用できます。光回線などのサービスがエリア外で使えない地方自治体からも注目を集めており、たとえば鹿児島県の瀬戸内町の請島と与路島では、スターリンクの導入実験が行われています11)

高速のインターネットが利用できる

動画視聴やオンライン会議などをストレスなく利用するのに十分な通信速度です。ただし前述したように、光回線に比べると、通信速度はやや遅くなります。

海上や山奥などでも高速のインターネットが利用できる

ROAMやボートのプランを選択すれば、山奥のキャンプ場や船上などでも高速のインターネットを利用できます。

スターリンクのデメリット

さまざまなメリットがある一方で、スターリンクにはつぎのようなデメリットもあります。

天候の影響を受けることがある

通信速度が天候に左右される場合があるのは、スターリンクの代表的な弱点です。豪雨の日などに衛星放送が映らないのと同じように、晴れの日は快適でも悪天候の日には通信速度が低下したり、接続できなくなったりすることがあります。

アンテナの設置場所によっては工事が必要

画像: アンテナの設置場所によっては工事が必要

前述したように、光回線導入時のような工事を必要とせず、アンテナを設置するだけで利用できる手軽さがスターリンクの特徴です。ただし、スターリンクのアンテナは「上空に遮蔽物がない場所」に設置する必要があります。そのため、自宅など決まった場所でスターリンクを利用する際には、条件を満たすために屋根の上や壁面などに設置しなければならない場合があります。その際には設置工事を業者に依頼することになります。

なお、自宅にアンテナの設置場所に適した場所があるかどうかは、公式アプリ(App StoreGoogle Play)で確認することが可能です。

月額費用、アンテナ購入費用がやや高い

2024年10月現在、個人向けサービスでもっとも安いプランでも月額6,600円がかかります。また初期費用としてアンテナ代5万5,000円が必要になります。一方、光回線の場合はフレッツ光であれば月額利用料は3,000~6,000円、工事費用は約2万円です(ルーターなどのレンタル代は別途)12)

スターリンクのしくみ

画像: 画像:iStock.com/BlackJack3D

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ここでは、改めてスターリンクのしくみについて詳しく解説します。

スターリンクは衛星コンステレーションによって運用されている

人工衛星を利用した衛星インターネットはスターリンクの登場以前からありました。たとえば、JALやANAの国内線でのインターネットサービスも衛星インターネットの一種です。

従来の衛星インターネットは、赤道上空約3万6,000kmにある静止軌道衛星(※1)を利用するのが一般的でした。また人工衛星の数も数基と限られていたため、通信速度はかなり遅いものでした。

一方、スターリンクは非静止衛星(※2)と呼ばれる、高度約550kmの低軌道に配置された数千基以上の人工衛星群で運用されています

〈図〉衛星コンステレーション

画像: スターリンクは衛星コンステレーションによって運用されている

これらの人工衛星群はネットワークを形成し、連携しながら機能します。このしくみを「衛星コンステレーション」と呼びます。スターリンクは、衛星コンステレーションを利用することで、場所を選ばずに高速なインターネット接続が可能になっているのです。

なお、衛星コンステレーションはインターネットだけでなく、さまざまな用途に活用されています。

※1:静止軌道衛星とは、赤道上空約3万6,000kmの高度にある人工衛星のこと。速度約3km/秒の円軌道を周回し、地球の自転と同じ速度で動くため、常に同じ地点上に位置している。

※2:非静止衛星とは、低軌道に打上げる人工衛星のこと。地球を常に周回し続けており、地球上の特定の地点に固定されていません。「ひまわり」などの愛称で知られる静止軌道上の静止衛星は、地球の自転と同期して動くため、常に同じ場所から見えるのが特徴。

●スターリンクの非静止衛星の打上げ数
スターリンクの非静止衛星は、2024年4月時点で約6,000基が打上げられており、将来的には約4万基まで増える予定です13)。これは2024年現在で発表されている衛星コンステレーションの中でもっとも大規模なものです。

これだけ多くの人工衛星を打上げられるのは、スペースXのコストカットの成功が大きな要因です。人工衛星の打上げには莫大な費用がかかりますが、スペースXは再利用可能なロケットを開発し、打上げコストを10年間で10分の1程度にまで軽減しました14)

この効率化により、人工衛星の打上げで国や他の民間企業を大きくリードするようになりました。2022年には、世界で年間2,368基の人工衛星が打上げられ、そのうち1,632基がスターリンクの人工衛星です15)

〈図〉人工衛星等の打上げ数の推移

画像: 内閣府宇宙開発戦略推進事務局「宇宙輸送を取り巻く環境認識と将来像」の「過去10年間の人工衛星等の打上げ数の推移」を改変。打上げ数の中に打上げ失敗と軌道投入失敗は含まない。

内閣府宇宙開発戦略推進事務局「宇宙輸送を取り巻く環境認識と将来像」の「過去10年間の人工衛星等の打上げ数の推移」を改変。打上げ数の中に打上げ失敗と軌道投入失敗は含まない。

日本の人工衛星の打上げ数は年間20基程度に止まります16)(2017~2021年の平均※新型コロナウイルスの感染拡大があった2020年は除く)。このことからも、スペースXの打上げ数が圧倒的に多いことがわかります。

災害時の通信システムとしての利用に期待

画像: 画像:iStock.com/takasuu

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スターリンクは、災害時の通信手段としても期待されています。

自然災害が発生すると、多くのインフラが被害を受け、インターネットも繋がりにくくなります。そこで、アンテナを設置するだけでインターネット接続ができるスターリンクが活躍するのです。

2024年1月の能登半島地震では、停電や設備の故障により広範囲で通信障害が発生しましたが、KDDIとソフトバンクがスターリンクのアンテナ約700台を無償で提供し、避難所などに設置したことで、インターネットを利用できるようになりました17)

この出来事を受け、災害時の通信手段としてスターリンクを導入する動きが広がっています。たとえば、自衛隊はKDDIと契約し、災害時にスターリンクが使えるように実証実験を行っています18)。また、徳島県では南海トラフ地震への備えとして、スターリンクの導入を決定しています19)

2024年末にはスマホでもスターリンクが使えるように!

画像: 画像:iStock.com/Vladimir Agapov

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新しいインターネットの手段として普及しつつあるスターリンク。2024年中には、auとスペースXの業務提携により、スマートフォンでスターリンクを利用できるサービス「Direct to Cell」の提供開始が発表されました1)。まずはSMSなどのメッセージ送受信からスタートし、順次、音声通話やデータ通信にも対応する予定です。

このような宇宙技術によって、新しいサービスが次々に誕生し、私たちの生活はますます便利になります。近い将来、スターリンクを通信手段として利用することが当たり前の時代が来るのかもしれません。

※この記事の内容は2024年10月18日時点の情報を基に制作しています

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