オーロラとは? 現象のしくみを解説
まずは、オーロラが発生するしくみについて見ていきましょう。
オーロラ発生のメカニズム
オーロラ発生のきっかけになるのは、太陽から吹き出す「太陽風」です。風といっても地球で私たちが感じているものとは違い、プラズマ(電気を帯びた粒子を含む気体)が高速で流れることで起きるのが、この太陽風。
太陽風はやがて地球にも届きます。このうち大部分が地球の後方に回り込んだ後、再び地球に引き寄せたれて地球の大気と衝突するとき、大気中の元素が反応して発光する現象が、オーロラの正体なのです。
オーロラは、南極や北極、およびその周辺のカナダやアラスカ、北欧などでよく観測されます。地図上では緯度60度〜70度のあたりで、このエリアを「オーロラベルト」と呼びます。地域が限定される理由には、地球が強い磁力を持っていることが関係します。
「地球はよく、“巨大な磁石”と例えられます。北極がS極、南極がN極になっており、両極をむすぶように巨大な磁力線ができているのです。磁力が北極と南極の方向に、常に吸い込まれている状態だと想像してみてください。すると、太陽風も地球の磁力線に導かれて、両極の周辺に集まってくるというわけです」(渡辺さん)
オーロラがゆらゆらと揺れたり、カーテン状、コロナ状、帯状などさまざまな形を作ったりするのも、地球の磁力に吸い寄せられて動いているためだそうです。
「オーロラ=冬の現象」は実は間違い!
さて、オーロラが観測される時季=寒い季節、というイメージはありませんか? 意外なことに、実際は季節を問わず発生しているのだそう。
「オーロラは、年中起こりうる現象です。オーロラが観測されやすい北極圏周辺では夏のあいだ白夜が訪れ、太陽が沈まなくなります。その結果『見えない』というだけで、実はオーロラ発生に季節や気温はまったく関係ないんですよ」(渡辺さん)
現に、日本国内では真夏の8月にもオーロラが観測されているとのこと。
日本でオーロラが見れるってホント?
オーロラ発生のメカニズムを踏まえて、「じゃあなんで緯度が低い日本でもオーロラが見られるの?」と疑問に思う人も多いでしょう。ここからは、日本でもオーロラが見られる秘密に迫っていきます。
「きたすばるでは、北海道でオーロラが観測された回数の記録を行っています。2024年はかなり好調で、11月までに8回のオーロラが確認されました」(渡辺さん)
日本のような低緯度地域で見られるオーロラを「低緯度オーロラ」といいます。低緯度オーロラは極地で見られるものとは違い、うっすらと空を覆う程度の光だそう。それでも、貴重な宇宙の神秘をこの目で目撃できると思うと、なんだかワクワクさせられます。
じつは日本では昔からオーロラが観測されており、最も古い記録は西暦620年、日本書紀に記された「赤気(せっき)」(当時のオーロラを指す言葉)だと考えられています1)。その後も度々、赤気の記録は残されています2)。
といっても、日本上空に太陽風が届いてオーロラが現れるわけではありません。極地でオーロラが発生した際、特に大規模な場合は日本からでも目視することができるのです。これが、日本で見られる「低緯度オーロラ」のしくみ。日本からは北極圏周辺のオーロラを眺めることになるため、必ず北の空に現れるのも特徴です。
「通常、緑色のオーロラは高度約100kmから250kmの場所に現れやすいのですが、国内でも見られるものはもっと上空、200〜400kmほどのかなり高い位置に発生します。日本から見るとちょうどオーロラの上部が、地平線から顔を出すようなかたちになりますね」(渡辺さん)
オーロラは高度によって色が変わります。オーロラの上部は赤色をしていることが多く、そのため日本の低緯度オーロラも赤く見えるのだそう。かつて「赤気」と呼ばれていたのも、これが理由と言えるでしょう。
日本でオーロラを見れる場所(地理的条件)とタイミング
では、日本からも肉眼で見られる「大規模なオーロラ」が発生するタイミングとはいつなのでしょうか。また、少しでも目撃の可能性を高めるための、有利な条件はあるのでしょうか。それぞれご紹介します。
大規模な太陽フレアによってCMEが発生したとき
太陽の表面では、時折太陽フレアという爆発現象が起きています。このとき、CME(Coronal mass ejection)という、太陽から惑星間空間内へ突発的にプラズマの塊が放出される現象を伴う場合があり、これによって通常よりも強力な太陽風が発生します。結果、日本からも目撃できる大規模なオーロラができあがるのです。
「CMEが発生してから太陽風が地球に届くまでは2日ほど。そのため、天文台がCMEを観測して2日前後で、オーロラ発生の可能性が高まると考えられるでしょう。これをもとに、きたすばるでもXでオーロラ予報を発信しています。ですが、太陽風の動きを正確に予測することは非常に難しく、実際にオーロラを見られるかは運次第になってしまいますね」(渡辺さん)
太陽フレアの状況は、宇宙天気予報などでチェックするといいでしょう。
太陽活動が活発なとき
太陽活動(太陽の表面で起こるエネルギー活動)には周期があり、おおよそ11年に1度、太陽フレアが頻繁に発生する活発な時期を迎えます。このタイミングが、日本でもオーロラを観測する大きなチャンスです。なお2024年現在、太陽が極大期を迎えたと言われており、2025年にかけてオーロラの観測が期待できると言われています。
北海道や東北地方などの緯度が高い地域
本来は高緯度の極地で見られる現象であるオーロラ。そのため、日本国内でも、より高緯度地域の北海道・東北地方のほうが観測条件はよくなります。
また、前述のとおり日本のオーロラは必ず北の空に発生するため、北側に遮蔽物がないことも重要なポイントです。北海道では北方に海が広がる稚内市やオホーツク沿岸で、多くの目撃情報が寄せられています。
【近年、日本でオーロラが観測された地域】
- 北海道:稚内市・網走市・根室市・名寄市・陸別町
- 青森県:八戸市
- 岩手県:盛岡市
- 秋田県:秋田市
光害の少ない場所・月のない夜・晴天の日
低緯度オーロラのほんのりとした光は、街灯や月の光に負けてしまう可能性が高いです。光害(人工光で夜空が明るくなる現象)が少なく、可能な限り真っ暗なスポットを選ぶことが、オーロラ観測の必須条件。また当然、雲が多い日や天気の悪い日はオーロラを見ることができません。天気予報をしっかりとチェックして、晴天の日を狙いましょう。
おすすめの季節や時間帯
オーロラの源である太陽風が発生するタイミングは、とくに定まっていません。そのため、季節や時間帯によって観測の可能性が高まるということは、あまり考えられないでしょう。
オーロラ観測のための準備とガイド
日本国内でのオーロラ観測はとても貴重で、難易度はかなり高いといえます。一方で、「カメラの機能向上やSNSの発展の影響もあり、この10年ほどで目撃情報は増えています」と渡辺さん。とくにここ数年は太陽活動が活発になりつつあると考えられ、狙い目の時期。オーロラ観測に挑戦したい!というみなさんに向けて、その心得を教えてもらいました。
観測に必要な服装
国内でオーロラを観測しやすい北海道・東北地方は、秋ごろにはすでにかなり冷え込みます。防寒の備えはしっかりと行いましょう。
「観測時はほとんど体を動かさないものです。真夜中に野外でじっとしていると、想像以上に寒さを感じます。9月ごろでもダウンジャケットを用意しておくのがおすすめですし、冬季に訪れる場合はやりすぎかな? というくらい防寒具を身につけてほしいです」(渡辺さん)
7月・8月でも夜は肌寒いことがあるそう。虫刺されやけがを防ぐためにも、夏場も長袖長ズボンを着用しておきましょう。
カメラは必携アイテム! オーロラ撮影の基本テクニック
肉眼ではうっすら見える程度の低緯度オーロラですが、カメラのレンズは人の眼よりずっと高性能なため、写真に撮ることで、低緯度オーロラの特徴である赤い光も写すことができるそう。観測の際は、必ず撮影にもチャレンジを!
きれいに撮影するには、一眼カメラを三脚に固定するのが最もおすすめです。
「何度か撮影してみて、白飛びしない程度のISO感度や露出に設定しましょう。日によって環境がまるで変わりますから、その場でちょうどいい設定を都度探るのが大切です。オーロラは広範囲を動いたり、広がったりするので、広角レンズを使うといいですね」(渡辺さん)
スマートフォンのカメラ機能もかなり進化しており、比較的新しい機種であれば十分撮影が叶うそうです。一眼カメラを持っていない人も、ぜひ手持ちのスマートフォンで挑戦してみましょう。
野生動物との遭遇に要注意
オーロラ観測に適した暗い場所は、市街地から離れた山中ということも多いでしょう。とくに北海道は、離島以外の全域がヒグマの生息地と言われています。周辺で近日中にクマの目撃情報があれば、安全のために観測を控えたほうが無難です。
「クマが冬眠している冬を選ぶとより安心できるかもしれませんね。その場合は、くれぐれも防寒対策は厳重に!」(渡辺さん)
私有地には立ち入らない
ひらけた土地は夜空を見上げるのにもってこいの場所ですが、農業用地などの私有地であるケースも多く、注意が必要です。観測場所を選ぶときは、私有地に該当しないか事前にチェックしておきましょう。知らず知らずのうちに足を踏みいれた結果、生産者に多大な損失を与えてしまうおそれも。私有地への侵入は絶対にNGです。マナーを守って観測を楽しみましょう。
日本でオーロラを目撃できるチャンス!?
「オーロラを実際に体験すると、本当に神秘的な現象だと感じます。日本国内でオーロラを観測するのはかなり難しいですが、チャンスはけっしてゼロではありません。一般のみなさんが撮影した写真が、専門家の研究に役立つこともあるんですよ」と渡辺さん。
2024年現在、太陽は11年周期の極大期を迎えています。みなさんも太陽の活動状況をこまめにチェックして、オーロラとの遭遇を目指してみては? あなたの目撃情報が、宇宙をひもとくヒントにつながるかもしれません。
※この記事の内容は2024年12月12日時点の情報をもとに制作しています