※アイキャッチ画像提供:ASTRAX
無重力体験とはどんなもの? なにができる?
宇宙旅行をはじめとした宇宙ビジネスが盛り上がる昨今、じつは、地球上でも無重力を体験できるサービスが世界各地で開始されています。
「無重力は宇宙でしか体験できないのでは?」と思う方も多いでしょう。ではどうやって、地球にいながらその状態を体験できるのでしょうか。
ここで知っておきたいのが、宇宙での無重力状態が生み出されるメカニズムです。このメカニズムをうまく利用して、地球で無重力体験ができるしくみは作られています。
そもそも宇宙の「無重力」とはどんな状態?
無重力というと「重力がないこと」をイメージしますが、じつはそうではありません。一般に無重力といわれる状態は、地球の引力と、地球を周回する物体の遠心力が釣り合っている状態なのです。この状態を無重量ともいいます。
すべての物体は互いに引き合う力「引力」を持っており、地球にもこの「引力」が働いています。そして地球が自転することで生まれる「遠心力」と合わさった力が、「重力」と表現されています。
宇宙空間でも、この地球からの引力は多かれ少なかれ存在しており、よく国際宇宙ステーション(ISS)内で生活する宇宙飛行士が無重力状態で浮きながら生活していますが、そこにも引力はあるのです。
では、なぜISSでは無重力状態になるのでしょうか。ISSは地球の周りを秒速約7.7kmの速さで回っており、遠心力が働いています。その遠心力と地球の引力が釣り合い、打ち消されることで無重力状態になっているのです。
同じように、何かしらの方法で地球の引力を打ち消す、あるいは引力を感じさせないことができれば、地球上でも無重力状態を作ることが可能です。こうした考えを実践したのが無重力体験なのです。
地球でできる無重力体験=「無重力飛行」のしくみ
地球で作られる無重力状態の中には、身近な現象でいえば、放り投げるなどの物体を落下させることも当てはまります。遊園地のフリーフォールやバイキングで感じるフワっとした感覚が、一瞬の無重力状態ということです。ちなみにこれらの場合には、すべてのものが一緒に落ち続けているために無重力状態を体験できます。
この無重力状態を長く体験できるサービスとして行われているのが、「パラボリックフライト(無重力飛行)」というものです。航空機で一定以上の高度間を、放物線を描くように上下に飛行することで、数秒〜数十秒間の無重力状態を味わうことができます。
高度7,500〜10,000mから一気に飛行機の高度を急上昇させ、特定のタイミングでエンジンの出力をダウン。こうすることで、航空機が放物線飛行の状態になり、頂点まで達したところで今度は飛行機を急降下させます。その間の数秒〜数十秒は重力が他の力に打ち消されて、無重力状態となるのです。
パラボリックフライトでは、この急上昇と急降下の動きを複数回繰り返すことで、一度のフライトで何度も無重力の感覚を味わうことができます。
無重力体験を提供している企業とその費用
では、どのような企業が無重力体験のサービスを提供しているのでしょうか。国内、海外でそれぞれ紹介します。
ASTRAX ZERO GRAVITY(日本)
日本で無重力体験を行っているのが株式会社ASTRAXが提供している「ASTRAX ZERO GRAVITY(無重力飛行サービス)」です。2012年から、おもに愛知県営名古屋空港(小牧空港)で実施しており、1回約1時間半のフライトで、約20秒間の無重力状態を7〜8回体験できます。10〜70歳が利用可能で、66歳以上は所定の身体検査が必要になります。
料金は1人160万円(税抜)から。特別な企画も加えたフライト(特別コース)は240万円から、貸切コースは480万円からとなっています。その他、土日祝などの休日のフライトやほかの空港からの離発着の場合には追加料金が発生します。
1回のフライトで参加できる人数は3名まで。そのほかにパイロットや体験者をサポートするクルー(ASTRAX無重力飛行士)、飛行機会社のスタッフが搭乗します。動画や写真の撮影、コスプレ着用なども可能で、テレビ番組やYouTube向けの撮影もできるそう。フライトのスケジュールは不定期で、数カ月先になることも。ただし参加希望者のエントリーは常時行っており、ホームページなどから申し込めます1)2)。
以下、実際に体験をした医学博士の石田喜子さんのコメントをご紹介します。
「童心に帰る」とはまさにこのこと!今までの人生の中でここまで常識がくつがえされる体験はなかったように思います。ただ、あまりにも全てが初めての体験だったので、準備していた実験をやるのも精一杯でした。思いっきり楽しめましたが、初の無重力体験では「やり残した感」もありました(それもあって続けて3回も参加させていただいたのですが・・・)」(一部抜粋)3)
Zero Gravity(アメリカ)
全米各地でパラボリックフライトによる無重力体験を実施しているアメリカのZero Gravity。ボーイング727という機体を使い、約2時間のフライトで、約25〜30秒の無重力体験を12回ほど味わえるプログラムです。さらに同じフライト内で、月(地球の6分の1)や火星(地球の3分の1)の重力を体験する時間も用意されています。
参加費用は、1人8,200ドル(アメリカへの渡航費用は別)。8歳以上なら参加可能(14歳未満は保護者の同行が必要)となっています。
もっと気軽に行ける!日本で無重力体験ができる場所
ここまで本格的な無重力体験ではなくても、もう少しお手頃な費用で、なおかつ気軽に行けるところで、無重力の気分を味わえるスポットも存在します。週末のお出かけにもぴったりな、親子で行けるスポットが多いので、ぜひ参考にしてください。
【アクティビティ】意外と身近にある⁉︎ 無重力体験
前述した無重力のしくみをふまえると、さまざまなアクティビティでも短時間なら無重力に近い状態を味わうことができます。たとえば、身近なところでは遊園地のフリーフォールやバンジージャンプ、スカイダイビングのように一気に落下するもの。あるいはジェットパックという、背中に背負った機材から水が噴き出し、その水圧で空中浮遊するマリンアクティビティも無重力感覚になれる体験のひとつです。
最近では、室内でスカイダイビングを体験できる施設なども人気になっているので、ぜひお近くの施設などで体験してみてください。
【科学館・公園】親子におすすめ! 月面の重力が体験できるスポット
無重力とまではいかなくても、地球の6分の1である月の重力を体験できるスポットは全国各地にあります。特殊な機械で体を支え、持ち上げることで、月の重力体験ができるのです。科学館をはじめとした、主なスポットを紹介します。
高柳電設工業スペースパーク(郡山市ふれあい科学館)/福島県郡山市
宇宙がテーマの都市型科学館「高柳電設工業スペースパーク」では、「ムーンジャンプ」というコーナーで、月面の重力を疑似体験することができます。6歳以上、体重70kg未満等の注意事項をクリアした人が体験可能です。館内にはほかに、ギネスに認定されたプラネタリウムなども常設しています。
佐賀県立宇宙科学館《ゆめぎんが》/佐賀県武雄市
巨大な宇宙船のような建物が特徴的な「佐賀県立宇宙科学館《ゆめぎんが》」では、火星・月・冥王星の映像を見ながら、まるでそれぞれの惑星をジャンプしているかのような最新の機器「グラヴィティ ジャンプ」が体験できます。火星は地球の3分の1、月は6分の1、冥王星については16分の1という、地球との重力の違いを体感できます。
【番外編】写真で無重力を体験⁉︎ まるで宇宙なフォトスポット
体で無重力を体験する以外にも、まるで無重力空間にいるかのような写真を撮影して、SNSに投稿したい人、思い出に残しておきたい人もいるはず。そのような人におすすめのスポットがあります。
JAXA種子島宇宙センター/鹿児島県熊毛郡
JAXA種子島宇宙センターは、日本最大のロケット発射場であり、総面積は約970万㎡にもおよびます。センター内には「宇宙科学技術館」があり、宇宙に関して学べるコーナーが多数。宇宙飛行士などが滞在する国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」の実物大モデルもあり、その中には、まるで無重力状態で「きぼう」にいるかのような写真を撮影できるフォトスポットが用意されています。
宇宙に行かなくても“無重力”を体験してみよう!
子どもの頃、宇宙飛行士がフワッと浮きながら移動している姿を見て、いつかは自分も体験したいと思った人は多いはず。誰もが気軽に宇宙へ行けるのはまだ先の話かもしれませんが、地球にいながら無重力状態やそれに近い体験をする方法は意外と身近にあります。
今回紹介した航空機による無重力体験や、気軽に無重力や低重力の気分を味わえるスポットに行ってみてはいかがでしょうか。宇宙をもっと身近に感じられるかもしれません。
※この記事の内容は2024年8月23日時点の情報をもとに制作しています