※アイキャッチ画像提供:はまぎん こども宇宙科学館
【全プラネタリウム共通】押さえておきたい座席選びのポイント
プラネタリウムは上部が半球のドーム状になっており、フロアの中心に投影機が置かれているのが基本。大平さんによると、「プラネタリウム鑑賞で“何を重視するか”で座席選びは変わってきます」とのこと。まずは基本のポイントを押さえていきましょう。
星空全体を見渡したい方向け
「投影される星空や映像全体を見渡して楽しみたいという方は、比較的後方の座席が見やすいでしょう。ドーム全体を見通しやすいですし、首を大きく動かさなくても楽に視点を変えることができます」(大平さん)
星空への没入感を重視したい方向け
一方で、「本物の星空を見上げるような没入感を重視したい方は、ドームの中心付近がよいでしょう」と大平さん。
プラネタリウムは、広い夜空を数十メートルの範囲に縮小しています。その都合上、端に行くほど方角に歪みが生じるのだそう。ゆえに中心に近いほうが、本物の星空のような臨場感を味わえるのです。
ただし中心には投影機が置かれているので、視界が遮られがち。また、機械から発する音が気になることもあります。そこで中心よりもやや後ろ側、投影機から少し距離をとった位置に座るのがおすすめだそうです。
「映画のような感覚で楽しむならやや後方、天体観測の予行演習なら中心部と、ご自身の目的別に座る場所を選ぶといいですね」(大平さん)
【形状・座席配置別】プラネタリウムでおすすめの席の選び方
プラネタリウムの形状や座席配置はさまざま。大きくは、「一方向・水平型」「一方向・傾斜型」「同心円型」の3つに分類されます。種類によって座席選びのポイントはどう変わってくるのでしょうか? それぞれの特徴とあわせて紹介します。
一方向・水平型の場合
丸いドームの中で、観客皆が同じ方向を向いて座る座席配置。すべての座席から正面が見やすくなっています。
「現在、もっともよく見られるタイプの座席配置です。プラネタリウムの番組には、映像を交えたものやストーリー仕立てのものも多いですよね。観客全員が同じ方向に注目することで、そういった映像演出を楽しみやすい造りになっています」(大平さん)
番組の主役となる星座や、見どころの映像は正面部分に映し出されることがほとんど。中央よりもやや後方に座ることで、映像演出を体感しやすくなります。
「この場合は投影機の横側か、やや斜め後ろが見やすくておすすめです。投影機のすぐ前に座席があれば、そこもいいですね」(大平さん)
一方向・傾斜型の場合
観客皆が正面を向いて座るのは一方向・水平型と同様ですが、床に傾斜がついているのが特徴。そのため、座席列によって視点の高さが変わる配置です。
「傾斜があることで、視界いっぱいに映像を楽しむことができます。目線の下まで星空を体験できるのが、このタイプの魅力。宇宙船の窓から宇宙を見下ろすような、臨場感あふれるパノラマ感が魅力です」(大平さん)
こちらも一方向・水平型と同じく、見どころが投影されるのは正面であることが多いです。そのため中央よりもやや後方の座席がおすすめといえるでしょう。
「傾斜のおかげで投影機が邪魔になりにくいのも一方向・傾斜型のメリット。なので、投影機の真後ろ、ど真ん中を狙ってもいいですね! 非常に没入感のある体験ができるはずです」(大平さん)
同心円型の場合
投影機を中心に同心円状に座席があり、観客が中央を向く配置。座席の位置によって、視点が大きく変わるのが特徴です。1923年にドイツでプラネタリウムが発明された際は、この座席配置が採用されていました。日本国内でも、歴史ある施設はこの配置になっていることが多いそう。
「星空そのものをしっかりと魅せるのが同心円型の良さ。それを存分に活かせるのは、やはり中心に近い位置ですね。基本のポイントでもお伝えしたとおり、投影機に近すぎると見えづらくなってしまうので、少し距離をとるのがおすすめです」(大平さん)
見たい方角の対角線側に座れば、お目当ての星が見やすくなるでしょう。見どころの星座は南側に投影されることが多いので、まずは北側を選べば間違いありません。
「解説者による生レクチャーがある施設なら、その近くに座るというのもひとつのポイントです。解説する人の目線が近くなることで、説明がよりわかりやすくなるはずですよ」(大平さん)
わからない場合は施設のスタッフに聞いてみよう
同じ施設でも、その日の番組によっては見やすい座席が変わってくることもあるでしょう。どの座席を選んだらいいか、よくわからない…そんなときは、「ぜひプラネタリウムのスタッフの方に質問してみてください」と大平さん。
「ただし開演直前や混雑時は、スタッフの方々も忙しくされているので、むやみに声をかけないよう気をつけたほうがいいでしょう。早めに訪れてアドバイスを仰ぐのがベターです。番組の感想なども、積極的にお伝えしてみてくださいね」(大平さん)
特別な体験ができる!全国各地のおすすめプラネタリウム
最後に、大平さんがおすすめする全国各地のプラネタリウムをご紹介します。プラネタリウム・クリエイターが太鼓判を押す施設、ぜひチェックしてください。
【愛知県】名古屋市科学館
「星空を魅せることを突き詰めた、まさにプラネタリウムの王道のような施設です。日本国内の“プラネタリウム黎明期”から存在する歴史のある施設であり、直径35mのドームは国内最大の大きさを誇ります。1962年開館、2011年に大幅なリニューアルが行われました」(大平さん)
「座席配置は同心円型。シートとシートのあいだにゆとりがあり、どの席を選んでもとてもゆったりと星空を楽しめます。座席を回転できるので、視点を楽に変えられるのも魅力です。星空や天文を本格的に楽しみたい人には、特におすすめでしょう」(大平さん)
【神奈川県】はまぎん こども宇宙科学館
「最先端の技術を駆使し、限りなく実際の星空に近づけたプラネタリウムです。投影される星の数はなんと12億で世界一。2023年にはギネスブックにも登録されました。肉眼では見えないような暗い星まで、忠実に再現しているんです。目に見えない星の存在によって、まるで本物の夜空のような奥行きを描き出します。双眼鏡を持ち込めば、また違った楽しみ方もできますよ」(大平さん)
「座席配置は一方向・傾斜型で、30度のかなり強い傾斜が特色です。視界すべてに星空と映像がひろがる、ここでしか味わえない没入感が待っています」(大平さん)
【岡山県】ライフパーク倉敷科学センター
「2019年にリニューアルされた、一方向・傾斜型の施設。映像が非常に美しく、瀬戸大橋など地元の景色とともに投影される星空は圧巻です。当日21時の夜空を再現するのがこだわりだそう。星空は毎日変化するものですから、日ごとに違うプログラムになっているのもおもしろいところですね。学芸員自ら星空を観測し、解説をおこなっているそうです」(大平さん)
「傾斜ドームできれいな星空と景色をゆったりと楽しめる、バランスのとれた施設といえるでしょう」(大平さん)
【番外編】コニカミノルタ プラネタリウム満天NAGOYA/プラネタリアYOKOHAMA
「名古屋、横浜を訪れる際にはこちらもぜひ立ち寄ってほしいです。どちらも投影機を使わない、新しいスタイルのプラネタリウム。LEDを使用してドームに直接映像を映し出しています。本来は見えにくい座席である最前列に、寝転んでみられるシートを設置しているのも特色。グッと没入感が高まります」(大平さん)
「ビビッドな色味や繊細なグラデーションが表現できるのが魅力で、従来の施設とは映像の鮮明さがまるで違います。星の輝きについては従来の投影機が一歩リードしている印象ですが、これからこういった新しい技術ももっと進歩していくでしょう。従来型と見比べてみるのも、おもしろいはずですよ」(大平さん)
コニカミノルタ プラネタリウム満天NAGOYA
住所
愛知県名古屋市西区則武新町3-1-17 イオンモール Nagoya Noritake Garden 3階
電話
052-526-1780
コニカミノルタ プラネタリアYOKOHAMA
住所
神奈川県横浜市西区高島1-2-5 横濱ゲートタワー 2階
電話
045-264-4592
Web
https://planetarium.konicaminolta.jp/planetariayokohama/
プラネタリウムで宇宙に出会おう
「みなさんが想像している以上に、個性豊かなプラネタリウムがたくさんあります。まずは上映内容を事前に調べて、自分にあったもの、興味を惹かれるものを探してみてほしいです」と大平さん。家族で、友人同士で、ときにはひとりで星空と向き合う。天体について学ぶもよし、宇宙にロマンを感じるもよし、圧巻の映像を楽しんでもよし…さまざまな楽しみ方ができるのも、プラネタリウムの魅力といえるでしょう。
「日々暮らしていると、嫌なことや不安なこともありますよね。そんな私たち人間が知り得るいちばん大きな世界が“宇宙”です。無数の星の、その中のひとつに私たちが暮らしている──そう思うと、忙しない社会に生きる私たちも、少し立ち止まって気持ちをゆったりできるのではないでしょうか。プラネタリウムは、宇宙に出会える場所。みなさんもぜひ訪れてみてください」(大平さん)
※この記事の内容は2024年11月28日時点の情報をもとに制作しています