宇宙旅行や月面基地建設など、さまざまな企業が宇宙関連のプロジェクトを進めている昨今。それらの企業活動を、私たちが間接的に“支援”できる方法があることをご存じでしょうか。そのひとつが、株式や投資信託などを通じた「宇宙株(宇宙関連企業株)」への投資です。株(株式)や投資と聞くと、少し難しく感じるかもしれませんが、宇宙に携わる企業のサポートにつながるものといえます。
本記事では、宇宙株の概要や、国内外の宇宙関連企業を紹介しながら、宇宙開発を私たちが後押しする方法を考えていきます。

●この記事の監修者

東京海上アセットマネジメント
執行役員 ビジネス開発本部長
浅野 孝さん

投資信託業や投資顧問業を営む東京海上グループの資産運用会社「東京海上アセットマネジメント」所属。約30年にわたって資産運用のフロントでエコノミスト、ストラテジスト、ファンドマネジメント業務に従事。2025年4月から現職。

宇宙株って、一体どんなもの?

画像: 画像:iStock.com/Alexyz3d

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「宇宙株(宇宙関連企業株)」とは、宇宙に関連するサービスや製品、事業などを手掛けている企業の株式、または、それらに寄与する技術を持った企業の株式などを指します。たとえば、ロケット開発を進める企業や、衛星データ(※)を活用したビジネスを展開する企業の株式が該当します。

また、複数の宇宙株に投資を行う投資信託もあり、例えば東京海上アセットマネジメントが運用する「東京海上・宇宙関連株式ファンド」は複数の国内外の宇宙株に投資を行っています。

※:衛星データとは、人工衛星が取得する地球の画像や気象情報、通信データなどの総称。防災、農業、交通管理など多くの分野で活用されている。

宇宙株への投資によって「宇宙プロジェクト」の支援ができる理由

画像: 画像:iStock.com/ArtistGNDphotography

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宇宙開発は、未来への大きな一歩を支える壮大なプロジェクトです。しかし、その実現には莫大な資金が必要となり、政府の支援以外の力も欠かせません。そんな中で、私たちでも宇宙関連企業を資金面で支えられる方法のひとつが「宇宙株」への投資なのです。

では、なぜ宇宙株への投資が企業の活動支援につながるのでしょうか。その理由には、株式投資のしくみが関わっています。

株式投資が企業の成長を支えるしくみ

画像: 株式投資が企業の成長を支えるしくみ

企業は新しい技術を開発したり、大型プロジェクトを進めたりする際に、資金を調達する手段のひとつとして「株式」を発行します。また、株式に投資した株主は、企業のオーナーとしての権利を得ることができ、企業の業績次第で配当金等を受け取ることができます。

たとえば、宇宙ロケットの開発や人工衛星の運用、衛星データを活用した新ビジネスの創出には膨大な費用がかかります。こうしたプロジェクトを進めるために、宇宙関連企業は投資家からの資金の一部を活用しているのです。

つまり、宇宙株に投資することは、未来の宇宙開発を後押しする支援となり、次世代の技術革新や新たな宇宙ビジネスの誕生につながるのです。

投資を通じて、間接的に宇宙開発の支援ができる

「投資」と聞くと、専門知識が必要そうで難しく感じるかもしれません。しかし、宇宙株は投資による利益獲得だけでなく、宇宙に関心を持つ人が「未来の宇宙開発を支える手段」のひとつともいえます。

複数の企業の株式などを組み合わせてひとつの金融商品にした「投資信託」であれば、個別の企業の株を選ぶ必要はなく、幅広い宇宙企業をまとめて支援することも可能です。投資に慣れていない人でも、宇宙ビジネス全体の成長を見守ることができます。

「宇宙に興味があるけれど、どう関わればいいのかわからない」。そんな人にとって、宇宙株への投資は「未来の宇宙を支える新しい関わり方」といえるでしょう。

宇宙ビジネスの市場規模と成長性

宇宙開発は、ロマンあふれる未来の話に思えるかもしれませんが、じつはすでに巨大な産業として世界中で成長を続けています。宇宙に関わる技術やサービスは、私たちの生活にも広く浸透しており、今後ますますその重要性が高まっていくでしょう。

現在、宇宙ビジネスの世界市場規模は2023年時点で約87兆円(5,700億ドル)とされており、通信衛星や衛星データ解析などの技術革新によって2040年には約4.9倍に拡大すると予測されています1)。これは、スマートフォンの普及やインターネット産業の成長と同じように、宇宙ビジネスが今後さらに私たちの身近なものになっていくことを意味します。

画像: ※1米ドル=152.44円(2024年7月末時点)で円換算。 ※2030年以降は、Morgan Stanleyによる予測値。2040年までに世界のインターネットの普及率が100%になるものとして算出した数値です。 ※世界の宇宙ビジネスは、人工衛星の製造・運用に加え、地球の観測事業、テレビ・ラジオ・携帯通信、高速通信サービスなどの人工衛星を利用したサービスが含まれます。なお2030年以降は、超音速飛行ビジネスの市場規模(売上高)を含みます。 出所:SIA、Morgan Stanley Research、Thomson Reuters、各種資料より東京海上アセットマネジメント作成 画像提供:東京海上アセットマネジメント

※1米ドル=152.44円(2024年7月末時点)で円換算。
※2030年以降は、Morgan Stanleyによる予測値。2040年までに世界のインターネットの普及率が100%になるものとして算出した数値です。
※世界の宇宙ビジネスは、人工衛星の製造・運用に加え、地球の観測事業、テレビ・ラジオ・携帯通信、高速通信サービスなどの人工衛星を利用したサービスが含まれます。なお2030年以降は、超音速飛行ビジネスの市場規模(売上高)を含みます。
出所:SIA、Morgan Stanley Research、Thomson Reuters、各種資料より東京海上アセットマネジメント作成
画像提供:東京海上アセットマネジメント

日本でも、宇宙ビジネスの可能性が広がっています。2020年時点で市場規模は約4兆円。政府は2030年代の早い段階で市場規模を2倍の8兆円にすることを目標1)に掲げ、企業の成長を後押ししています。そのために、1兆円規模の宇宙戦略基金2)のような支援策も整えられています。

宇宙開発は、短期間で大きな成果が出るものではなく、長い年月をかけて未来を築いていく壮大な挑戦です。すぐに結果が出るものではなくても、宇宙株を通して長期的に支援することで、数十年後には、かつて夢物語とされていたことが当たり前になっているかもしれないのです。

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宇宙ビジネスの未来予測

では近い将来、宇宙ビジネスにおいて実際にどのようなことが実現されそうなのでしょうか。世界中のさまざまな企業や機関が、未来に向けた宇宙ビジネスの計画を立てています。それらをもとに、2040年までの宇宙開発の未来予測を表にまとめました。宇宙株を通じて、こうした発展を長期的に見守るのも楽しさのひとつです。

イベント詳細
2025次世代ロケットの商業運用開始スペースX社やブルー・オリジン社などの企業が、再利用可能なロケットの商業運用を本格化。宇宙への輸送コスト削減が期待される。
宇宙での推進剤輸送の実証スペースX社が自社のロケット兼宇宙船「スターシップ」を用いて、宇宙空間での推進剤補給技術の実証を計画。
2026宇宙資源探査ミッションの開始ispaceなどの企業が、月面での資源探査ミッションを計画。月面資源の商業利用の第一歩となる予想。
2028月面基地建設の開始NASAのアルテミス計画により、月面での持続可能な有人基地の建設が開始。月面での長期滞在や研究が可能に。
2030商業宇宙ステーションの運用開始民間企業による商業宇宙ステーションが運用開始。観光や研究、製造など多目的な利用が進むと予想。
2035宇宙ホテルの運営開始宇宙旅行が一般化し、地球周回軌道上に宇宙ホテルが開業。一般の人々が宇宙での宿泊を楽しめるように。
2040宇宙エレベーターの実証実験地上と宇宙を直接結ぶ宇宙エレベーターの技術実証が行われ、宇宙へのアクセスがさらに容易に。

宇宙株のカテゴリー

画像: 画像:iStock.com/gorodenkoff

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宇宙株には、ロケット・人工衛星開発製造、打上げサービス、衛星データの利用、宇宙ビジネスを支える関連ビジネス、新たな宇宙ビジネスといった多様なカテゴリーがあります。これらのカテゴリーを理解することは宇宙関連事業の全体像を把握することにもつながるので、概要を見ていきましょう。

ロケット・人工衛星開発製造、打上げサービス

人工衛星の数は年々増加しています。その人工衛星を宇宙に送り届けるためのロケット開発や打上げサービスは、宇宙ビジネスの基盤ともいえる分野です。

ロケット開発には、推進技術や軽量素材の開発、燃料効率の向上など、多くの最先端技術が関わっています。近年では、再使用可能なロケットの開発も進み、コスト削減が期待されています。

また、人工衛星の製造も重要な市場です。通信衛星や地球観測衛星、測位衛星など、目的に応じた多種多様な人工衛星が開発されています。それらの打上げ需要が増えることで、関連企業の業績向上につながる可能性があります。

衛星データの利用サービス

前述の人工衛星が観測したデータは、さまざまな分野で活用されています。

たとえば、通信衛星を利用した衛星放送や、スマートフォンの通信サービスは、多くの人が日常的に利用しているもの。また、GPS(全地球測位システム)を活用した位置情報サービスは、地図アプリやカーナビ、自動運転技術の発展に不可欠な存在です。

さらに、地球観測衛星による気象予測や災害監視、農業分野での作物成長のモニタリング、海洋調査など、衛星データは幅広い産業に影響を与えています。これらのデータを利用する企業が増え続けていることから、衛星データ関連のサービス市場は今後も成長が期待されています。

宇宙ビジネスを支える関連ビジネス

宇宙産業が拡大するにつれて、それを支える周辺ビジネスも重要性を増しています。

たとえば、人工衛星を活用した5G通信サービスの提供や、衛星データを活用したAI解析による産業の自動化など、宇宙関連のITサービスが拡大しています。また、ロケットの打上げや、人工衛星とスペースデブリ(宇宙ごみ)の衝突リスクに対応する宇宙保険市場も成長しています。

さらに、宇宙関連施設の建設やメンテナンス、宇宙飛行士向けの生活支援技術など、宇宙産業を下支えする技術開発やサービスも今後の発展が期待される分野です。

新たな宇宙ビジネス

宇宙開発の進展とともに、新たな宇宙ビジネスの可能性も広がっています。とくに宇宙ベンチャー企業の成長が注目されており、これらの企業への投資やIPO(新規株式公開)も活発化する見込みです。

代表的な新興宇宙ビジネスとして、以下のようなものがあります。

宇宙旅行民間人向けの宇宙旅行サービスが開発されており、将来的には一般人が宇宙へ行くことが可能に。
宇宙資源開発小惑星からレアメタルや貴金属を採掘する技術の研究が進行中。
宇宙デブリ対策宇宙ゴミの除去や監視を行う企業が増えており、持続可能な宇宙開発のための取り組みが進行中。
宇宙太陽光発電宇宙空間に設置した太陽光パネルで発電し、地球に電力を送る技術の開発が進行中。
火星探査・移住計画火星への有人探査や、将来的な移住を視野に入れたプロジェクトが進行中。

これらの新しい宇宙ビジネスは、長期的な視点での成長が見込まれる分野であり、今後の投資対象として注目されています。

大手企業がずらり。日本にはどんな宇宙株がある?

画像: 画像:iStock.com/3DSculptor

画像:iStock.com/3DSculptor

日本の宇宙ビジネスは、官民連携のもとで成長を続けており、国内企業もロケット開発や衛星通信など幅広い分野で活躍しています。海外企業との競争や協力が進む中で、日本の宇宙関連企業はどのような役割を果たしているのでしょうか? ここでは、日本の宇宙産業を支える企業の一部を紹介します。

三菱重工

日本の宇宙開発を長年支えてきた企業であり、ロケット製造の中心的な役割を担っています3)。次世代国産ロケット「H3」の開発を主導し、打上げにも成功しています。政府の宇宙政策とも連携しながら、今後も宇宙輸送の分野での成長が期待されています。

参考資料

3)三菱重工

【関連記事】H3・H2Aロケットの違いとは?技術内容や今後の展望を解説【日本製ロケットの歴史】

日本電気(NEC)

日本を代表するエレクトロニクス企業のひとつで、人工衛星の開発・製造を手がけています4)。地球観測衛星や通信衛星の分野で実績があり、災害監視やインフラの維持管理といった実用的なサービスにも力を入れています。また、衛星データを活用した新しいビジネスの開拓にも積極的です。

参考資料

4)NEC(Japan)

KDDI

先進的な通信技術を展開する日本企業として、宇宙通信の分野での進出も強化しています5)。2024年5月には、スタートアップ企業と協力して宇宙関連事業を推進する共創プログラム「MUGENLABO UNIVERSE」6)を発表しました。今後、衛星通信を活用した次世代インターネットサービスの提供や、宇宙通信インフラの構築が期待されています。

知っておきたい、海外の宇宙株

画像: 画像提供:NASA Image and Video Library

画像提供:NASA Image and Video Library

宇宙開発は世界規模で進んでおり、特にアメリカを中心とした海外企業が革新的な技術やサービスを生み出しています。宇宙ビジネスの全体像を知るためには、海外の動向も把握しておくことが重要です。ここでは、注目の海外企業を紹介します。

パランティア・テクノロジーズ

パランティア・テクノロジーズは、大量のデータ分析を行う技術を持つ企業です7)。宇宙分野では、人工衛星が集めた地球の観測データを活用し、さまざまな問題を解決するための特別なソフトウェアを開発しています。

たとえば、気候変動の影響を予測したり、衛星画像を分析して災害時の対応をサポートしたりする技術を提供。政府機関や大企業と協力しながら、衛星データを社会に役立てる活動を行っています。

ロケット・ラボ USA

ロケット・ラボ USAは、小型ロケットを開発・打上げる企業8)です。とくに「Electron(エレクトロン)」というロケットは、小型人工衛星を宇宙へ運ぶために設計されており、すでに何度も打上げに成功しています。

また、人工衛星の部品を作ったり、宇宙空間での運用をサポートしたりと、ロケットの打上げ以外にも事業を広げています。「宇宙にアクセスしやすくすること」を目標に、より手軽に人工衛星を打上げられるしくみを開発している企業です。

参考資料

8)Rocket Lab

アマゾン・ドット・コム

アマゾンは、ネット通販の会社として知られていますが、最近では宇宙を使ったインターネット通信の事業にも進出しています。

「Project Kuiper(プロジェクト・カイパー)」9)という計画のもと、地球を回る小型の人工衛星をたくさん打上げ、どこにいてもインターネットが使えるようにすることを目指しています。これにより、インターネット環境がない地域にも通信を届けることができます。同じ分野ではスペースX社の「スターリンク」も有名で、今後の競争が注目されています。

参考資料

9)Project Kuiper

モトローラ ソリューションズ

モトローラ ソリューションズは、通信機器や無線システムを作っている事で知られています10)

宇宙分野では、人工衛星を活用した通信技術の発展に注力。特に、たくさんの小型人工衛星をつなげて大規模な通信ネットワークを作る「衛星コンステレーション」という技術を活用し、世界中で安定した通信を提供することを目指しています。将来的には、地球のどこにいてもインターネットや無線通信が使えるような新しいインフラを作ることが期待されています。

【関連記事】衛星コンステレーションとは?しくみや背景、スターリンクの例も解説

宇宙株や投資信託への投資を通じて、地上から宇宙開発の支援を!

宇宙開発は、一朝一夕に完成するものではなく、長期的な取り組みが必要となります。これらの進展を支えるのは、今まさに挑戦を続ける企業たちと、その挑戦を見守り、支援し続ける存在です。

「宇宙に興味があるけれど、どう支援したらいいかわからない」 ──そんな人こそ、宇宙株や投資信託への投資を通じて長期的に支援するという選択肢を考えてみてはいかがでしょうか?

未来の宇宙旅行、月面基地の建設、新たな宇宙技術の誕生。あなたの関心や支援が、未来の宇宙開発を後押しする力になるはずです。

*当ファンドのリスク・手数料等は上記特集ページをご確認ください。
*記事で紹介している銘柄は2025年2月末時点の組入銘柄です。個別銘柄への投資を推奨するものではありません。また、今後の当ファンドへの組み入れを保証するものではありません。

※この記事の内容は2025年3月31日時点の情報をもとに制作しています

この記事の監修者

東京海上アセットマネジメント

当社は、東京海上グループの資産運用会社です。1985年の創業以来、お客様から多大なるご支持をいただき、順調に成長を続けてきました。 主に個人のお客様を対象とした「投資信託業」、主に法人のお客様を対象とした「投資顧問業」を営んでおり、運用資産残高は約10兆円に達しています(2024年12月末時点)。

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