【1日目】鹿児島〜宮崎へ:ロマンあふれる宇宙開発と、星空に抱く憧憬
旅のスタート地点は鹿児島空港。九州随一の宇宙との関わりを誇る鹿児島から、車で「大分空港(SPACEPORT OITA)」を目指し、1日目は中間地点の宮崎まで向かいます。

鹿児島空港から東九州自動車道を利用して、約2時間。まずは鹿児島県肝付町にある「JAXA内之浦宇宙空間観測所」にやって来ました。
日本の宇宙開発の最前線!「JAXA内之浦宇宙空間観測所」

「内之浦宇宙空間観測所」は、宇宙空間観測やロケット打上げを行うJAXAの施設。宇宙研究のための観測機器を載せたロケットや人工衛星・探査機の打上げ、研究開発されたロケットの飛翔実験が行われています。また、打上げ後、軌道に乗った人工衛星から電波を受信し、観測データを得ることもこの観測所の重要な仕事です。

起伏の多い山を削ってつくられたという敷地は約70万㎡。東京ドーム15個分に相当する広さがあり、建物は機能的に配置されています。
山の地形を活かした台地に配置されている、世界でも珍しい山地に立つロケット打上げ場。ロケット打上げ場としては同県内の「種子島宇宙センター」が有名ですが、じつは世界で4番目、日本では初となる人工衛星「おおすみ」の打上げに成功した“宇宙開発の聖地”なんです!

ロケットの歴史や科学衛星について学べる宇宙科学資料館が併設されており、誰でも無料で見学が可能。施設内は広いので、車で移動しながらの見学が一般的です。
ここはロケットの打上げ場のほか、巨大なパラボラアンテナ、資料館など一般の方も入ることができ、宇宙にどっぷり浸かれる施設となっています。それでは施設に入ってみましょう!
※ロケット整備・打上げ期間など、施設の都合により見学できない時期や場所があります。詳細は公式サイトをご確認ください。
<衛星ヶ丘展望台>
早速山道を登り、所内でもっとも高い標高344mに位置する「衛星ヶ丘(ほしがおか)展望台」へGO! ロケットの打上げ後の追跡と、人工衛星や探査機の追跡管制に使用される主な設備を一望できます。

宇宙好きならずとも感動の絶景……! 日本宇宙開発の父・糸川博士もこの景色を見たかと思うと、時を超えて宇宙を感じられる感慨深い時間です。

天気のいい日には、はるか南方45kmに位置する種子島や馬毛島を、さらに運が良ければ遠くの屋久島を望むことができます。
<衛星追跡センター>
山道を下り、間近に見えてくる直径34mのパラボラアンテナは圧巻! ロケットで打上げられた人工衛星・探査機を追跡し、衛星から送られてくるデータの受信、コマンド送信、距離計測などを行っています。

パラボラアンテナは24時間運用中。衛星を追いかけて動いているため、アンテナが向いているその先には衛星があるということ! 宇宙のロマンを感じます。

アンテナはいつでも横を向いているわけではなく、衛星を追跡していないときは上を向いています。取材時は追跡中で、お椀形がバッチリわかるナイスなタイミングで訪問。

よく見ると、ひとつのお椀ではなく瓦のようなパネルが1枚1枚組み合わさってできていることがわかるパラボラアンテナ。そのパーツがこちら。カーブや厚みが少しずつ違うそうです。
<人工衛星「おおすみ」打上げ記念碑/糸川英夫博士の像>
1970年2月11日、日本初となる人工衛星の打上げがこの地から行われました。記念碑は、多くの困難を克服して「おおすみ」打上げを成功に導いた技術者たちに加え、日本の宇宙開発の父である糸川英夫博士を称えて建立されたものです。

糸川博士は、北は襟裳岬から南は種子島まで全国を回り、最終的にロケット発射場に最適な場所として、内之浦の地を選びました。

試験で使われたという、原寸大の人工衛星「おおすみ」。歴史に名を残すこととなった「おおすみ」の名は、内之浦がある大隅半島にちなんで名付けられたそう。
<M(ミュー)センター(イプシロンロケット打上げ場)>
車を走らせ、海沿いに移動。そびえ立つのは2013年9月14日に新型固体燃料ロケット「イプシロン試験機」の打上げが行われた打上げ場です。標高約200m、面積約2万5,000㎡の台地にはロケット発射装置、ロケット組立室、衛星整備センターがあります。

当時、内之浦からの衛星搭載ロケット打上げが7年振りであることに加え、12年振りに開発された新型国産ロケット打上げということもあり、全国から注目を集めました。

敷地内には、地上試験用に使用された部品が一部使われているM(ミュー)シリーズ「M-V型ロケット」の実物大模型が。日本ロケット史の礎を築いた存在です。

ロケット整備棟。ロケットは3段に分かれており、組み立て室で点検が行われた各段を整備棟に持ってきてこの中で組み立てが行われます。

1981〜1995年の間、ロケット発射実験時の打上げ発射装置に使用されていた火焔偏向板(かえんへんこうばん)。ロケットから吹き出るガスや炎がロケットやランチャ装置にかかることを防ぐ役目をしていました。宇宙へ行くにはすさまじいエネルギーが必要なことが伺えます。
ロケットを打上げていないときも、整備やつぎの打上げまでの作業をしている内之浦宇宙空間観測所。宇宙に関わる人々が働く貴重な姿を垣間見られるのもここに来る価値のひとつだと感じました。

タイミングによっては整備している様子を見られることも! 宇宙開発のために働くみなさん、かっこいいです!
<宇宙科学資料館>
最後はスタート地点付近に戻り、宇宙科学資料館へ。ロケットや人工衛星のモデル、構成部品、ロケット整備塔のモデルなどが展示されており、貴重な資料の宝庫。宇宙への学びを深めることができます。

宇宙科学資料館の入口。この施設は橋の横に建っています。この橋は「美宇橋(みゅーばし)」といって、観測所設立当初ロケットの部品などを運ぶために使用されていたそう。宇宙開発への歴史を感じることができます。

さまざまなロケットの20分の1サイズの模型。注目は右手前にあるペンシルロケット。こちらは日本で初めてつくられた固体燃料ロケットで、全長230mm(原寸大)という小ささ。人類の大きな一歩は、この小さなロケットから始まったのです。

M-4S型ロケット 第2段推力方向制御装置(TVC)。試験の際に付いた“コゲ”がリアルです。

科学観測ロケット発射指令管制装置。打上げ作業を監視し、必要な指令を発するためのもの。1970年2月に打上げられた日本初の人工衛星「おおすみ」もこの装置を使って打上げたそう。

1階には宇宙グッズの自動販売機が。宇宙食やロケットフィギュアなどが販売されています。

編集部が購入したのは、外国人宇宙飛行士にも人気だという日本のレトルトカレーと、内之浦宇宙空間観測所自販機でしか購入できないオリジナルハンカチ。
内之浦宇宙空間観測所
住所
鹿児島県肝属郡肝付町南方1791-13
電話
050-3362-3111
営業時間
8:30~16:30
定休日
(宇宙科学資料館)2カ月に1回の特別清掃日、ロケット打上げ日、その他
グランピングで星空鑑賞タイム「日向ヴィレッジ」
宇宙をたっぷりと身近に感じていたら、1日はあっという間。
九州の山並みを眺めながらロングドライブ。鹿児島県から宮崎県へと移動して、本日の宿「日向ヴィレッジ」へ。夕方頃に到着しました。

宮崎県日向市にある「日向ヴィレッジ」は体験型グランピング施設。「自然とアソブ、泊まる、体験する」をテーマに、手ぶらで気軽にキャンプを楽しめます。

宿泊先となるドーム型の部屋。ベッドが4台あり、のんびりできる空間が広がっています。

宿泊するドームテント併設のBBQ場。海と空が見えるガラス張りの窓は開放的な雰囲気です。

夜ごはんはBBQ。食事付きのプランなら食材は用意してもらえるので楽ちんです。宮崎牛や地元の野菜たっぷりで華やか! 見た目にもテンションが上がります。
食事の後は、焚き火にあたりながら「星空鑑賞タイム」。周囲には高い建物も明かりもないので、広大な星空(宙)を満喫できます!
都会の喧騒、日頃の忙しさ……すべて忘れてただ宇宙を感じられる、特別な空間と時間を味わえます。

悩みがちっぽけに思えてくるほど広くて美しい星空(宙)。現代人にはこの時間が必要かも……。
そろそろ就寝時間。宇宙の夢を見ながら、ぐっすりとおやすみなさい Zzz……。

日向ヴィレッジ
住所
宮崎県日向市美々津町清水ヶ谷2268
電話
0982-60-6066
営業時間
チェックイン15:00~/チェックアウト~10:00
定休日
なし
【2日目】宮崎〜大分:宇宙が身近な存在に感じられる2つのスポット
2日目は、宮崎からゴールの大分空港を目指しながら宇宙を感じる旅を継続。
本物の人工衛星に出会い、学びを深める「宮崎科学技術館」
宮崎市内にある「宮崎科学技術館」に立ち寄ります。こちらは大人も子どもも宇宙にどっぷり浸かれる体験型の施設です。

右奥に見えるのは「H-Iロケット」の実物大模型。遠くからでもよく見えるロケットは地域のシンボル的存在で、宮崎市民にとって宇宙が身近な存在なのだということが感じられます。
宮崎科学技術館は、「科学と宇宙」を楽しく学べるミュージアム。直径27mという世界最大級のプラネタリウムを有し、世界に5台しかない高輝度型の恒星投映機「スーパー ヘリオス」で3万8,000個もの星を映し出します。

(提供)宮崎科学技術館

(提供)宮崎科学技術館
<人工衛星 きく5号>
建物に入って、早速目を引くのは人工衛星。なんとレプリカではなく、本物です!

1987年8月27日に種子島宇宙センターから打上げられた「H-Iロケット」に使用された人工衛星「きく5号」の地上実験に使用されたものです。この衛星は打上げ用と実験用の2種類しかつくられていないため、地球に存在している唯一の「きく5号」ということになります。

間近で見ると大迫力!「JAXA」以外で、模型でない人工衛星のモデルが展示されている施設はあまりないため、貴重な展示です。
<アポロ11号 月面着陸船イーグル号 実物大模型>
イーグル号は、人類が初めて月面に降り立った際に使用した月面着陸船。
実機と同じグラマン社の製作で、実物大のイーグル号の展示はなんと! 宮崎科学技術館とスミソニアン博物館(アメリカ)だけとのこと。人工衛星同様、貴重な展示です。

宇宙船は上下に分かれており、現在月面に残っているのは下半分の部分。宇宙服の中から顔を出すと、月面での記念撮影が可能です。
<TECHNO EGG(テクノエッグ)>
2人乗りの連動チェアに乗って、VR(バーチャルリアリティー)の世界を体験できる乗り物(※)。4D-VRなので風や振動を同時に体感でき、臨場感あふれる映像を楽しめます。(※ただし、小学生以上)
編集部は、ロケットに乗って宮崎科学技術館から宇宙旅行へでかける『コスモ・ジャーニー』を視聴。最先端の技術で宇宙を疑似体験できます。

「宇宙に行ったらこんな感じなのかな?」地上から遠く離れ、宇宙に行ったような感覚をVRで、リアルに感じられます。
宮崎科学技術館
住所
宮崎県宮崎市宮崎駅東1-2-2
電話
0985-23-2700
営業時間
9:00~16:30
定休日
月(祝・休日を除く)、祝日の翌日(土日祝を除く)、12月29日~1月3日
アジア初の“水平型宇宙港”を目指す「大分空港」
宇宙を科学的に楽しむ「宮崎科学技術館」を後にして、向かったのは旅のゴール地点・大分空港。
アジア初の「水平型宇宙港」として宇宙関連企業に選ばれた同空港では、“来たる日”に備えて宇宙関連グッズやスポットを用意するなど、宇宙を身近に感じるさまざまな取り組みを行っています。

東側と南側が海に面し、開けていることも宇宙港の決め手のひとつとなったそう。
「水平型対応の宇宙港」とは、小型衛星搭載の宇宙ロケットを飛行機で空に運び、そのまま空中で発射する「水平型」の打上げを行ったり、有翼型の宇宙船が着陸したりするための場所です。
離着陸に必要となる3,000mの長さの滑走路があることや、ロケットや人工衛星の点検・整備に活用できる産業が県内に多いことなどを理由だったそうです。
大分の人々は宇宙港としての開港を心待ちにしている様子。そんな盛り上がりは、空港内各所で垣間見ることができます。
<1F/宇宙港フォトスポット>
大分空港へ到着したら、まずは1Fの到着ロビーへ。
「おんせん県おおいた」を象徴する「おけちゃん」がロケットに乗って宇宙へ飛び立っているかのようなトリックアートが施されたフォトスポットがインパクト抜群です。

さらに、床のQRコードを読み取ると惑星や宇宙飛行士が出現!一緒に撮影することができます。(宇宙に温泉があったらこんな感じかも?)
<1F/宇宙感あふれる足湯コーナー>
宇宙船の中で足湯をしている気分になれる、無料の足湯コーナー。最後まで宇宙を感じながら、旅の疲れを癒やします。

暖簾の右に描かれているのが「宇宙人U」。2F 出発ロビーのプリクラ機では彼(?)と一緒にプリクラも撮れます。

足湯スペース内のモニターでは大分県YouTube「宇宙ノオンセン県オオイタ(宇宙人U)」を放映中。

ここでしか買えない限定タオルが可愛い♪これをもって足湯に浸かれば、気分は宇宙温泉。
<2F/空の駅 旅人>
2Fには、宇宙関連グッズが豊富に揃う売店「空の駅 旅人」が。JAXA公式グッズ、NASAグッズ、宇宙食、アパレル類、文房具類、カプセルトイなど200アイテム以上が販売されています。

宇宙飛行士搭乗記念ワッペン。宇宙飛行士が宇宙に行く際のミッションをイメージしたデザインは、どれも素敵で選べない……!

福井県立若狭高校が開発した「JAXA認証 宇宙食鯖缶」。12年かけて開発し続け、2020年に野口宇宙飛行士が宇宙で食べたという、夢が詰まった鯖缶です。

大分空港を宇宙ステーションと地球をつなぐ「宇宙往還機」の着陸拠点にするための協定を結んでいるアメリカの宇宙企業「シエラ・スペース社」のグッズ。購入できるのは「空の駅 旅人」だけ!
旅の締めくくりに、宇宙を感じるお土産を買って帰るのもおすすめです!
大分空港(SPACEPORT OITA)
住所
大分県国東市安岐町下原13
電話
0978-67-1174
営業時間
6:30~最終便到着まで
定休日
無休
これにて、編集部の「宇宙(に思いを馳せる)旅行」はミッション終了!
九州には、いや日本には、こんなにも宇宙を身近に感じられる場所があるのですね。読者のみなさんも、私たちと一緒に宇宙を感じることができていたら幸いです。
それでは、ネクストミッションもご期待ください!