オリオン座は、もっとも知名度が高い星座のひとつ。冬の澄んだ夜空に輝くその美しい姿が、人々を魅了しています。本記事では、見られる季節や観測のコツ、名前の由来といった概要など、オリオン座を楽しむためのトピックスを、なよろ市立天文台 きたすばるの渡辺文健さんに教えていただきます。オリオン座の魅力を知れば、なにげなく見上げている星空がもっと特別なものになるはずです。

オリオン座を観測できる季節と時間

画像: 画像:iStock.com/m-gucci

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まず初めに、オリオン座を観測する際、最適な季節や時間について解説します。

ベストシーズンは、南の空に昇る「冬」

オリオン座のベストシーズンは、冬。なぜなら、比較的観察しやすい時間帯である夜20時ごろにきれいなオリオン座が現れるからです。

星座は、南の空に昇るときがいちばん見えやすくなります。したがって、20時ごろであれば1月下旬〜2月初旬がオリオン座観測のベストといえるでしょう」(渡辺さん)

画像: ベストシーズンは、南の空に昇る「冬」

また、星座の見える方角は日ごとに少しずつ変化するため、観測時期にあわせてその位置を押さえておきましょう。

〈夜20時ごろに見やすい方角〉

  • 12月:東の空
  • 1月下旬〜2月初旬:南の空

主な観測シーズンは秋〜春先

2月以降のオリオン座は少しずつ西に移動していき、3月いっぱいまでは20時ごろでも見られます。また、真夜中の2時半ごろであれば、9月ごろからの観測も可能です

早い時季からオリオン座を見たいという人は、深夜を狙って観測に出かけましょう。以下は、1年の中でもオリオン座を観測しやすい秋から春先までの観測できる時間帯です。

〈秋〜春先のオリオン座を観測できる時間〉

時期観測時間
9月2:30〜夜明け前
10月24:00〜夜明け前
11月22:00〜夜明け前
12月20:00〜夜明け前
1月18:00〜2:00
2月19:00〜1:00
3月19:00〜23:00

春や夏にオリオン座は見られない?

「春や夏にオリオン座を見るのは難しいの?」と思う人もいるかもしれません。実は、日本のような北半球では、春と夏にはオリオン座を見つけるのがとても難しくなります。

というのも、まず春にはオリオン座が西の空に沈むのが早く、夜遅くにはもう見えなくなってしまうからです。そして夏になると、オリオン座は昼間の空に現れるため、太陽の明るさに隠れて見えなくなります。

画像: 地球は太陽の周りを公転、1年で1回転。星座は1カ月後の同じ時刻には西に約30度移動して見える(星の年周運動)

地球は太陽の周りを公転、1年で1回転。星座は1カ月後の同じ時刻には西に約30度移動して見える(星の年周運動)

画像: 星の年周運動により、オリオン座は秋の真夜中には東の方角、冬の真夜中には南の方角、春の真夜中には西の方角に位置することになる

星の年周運動により、オリオン座は秋の真夜中には東の方角、冬の真夜中には南の方角、春の真夜中には西の方角に位置することになる

短い時間であれば、5月初旬の日没直後がオリオン座を見られる最後のチャンスです。それ以降は、秋までオリオン座を見ることは難しくなります。

〈春夏でオリオン座を観測できる時間〉

時期観測時間
4月19:00〜20:00
5月19:00〜19:15
6月なし
7月なし
8月なし

オリオン座の見つけ方

画像: 画像:iStock.com/kinpouge05

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オリオン座は非常に明るく個性的な図形を描く星座です。その見た目さえ覚えていれば、夜空で見つけるのは簡単。

その日、オリオン座が空に現れる時間帯と方角を事前に確認しておくといいですね。オリオン座よりも明るい星座はほとんどありませんので、その方角を見上げればすぐに見つけることができるはずです」(渡辺さん)

アプリを活用するのもおすすめ

見たい星座の観察にベストなタイミング・方角を調べられるアプリを使うのもおすすめです。

星空ナビ

iOS 15.1以降、Android 8.0以降対応 基本動作無料・一部アプリ内課金あり

アプリを起動してスマホを空にむけると、今見えている星の種類をナビゲートしてくれるアプリ。星座名で検索すれば、その日のおすすめ時間帯が簡単に把握できます。

星空ナビ
App Store
Google Play

iステラ/スマートステラ

iステラ:iOS 12.4以降対応 600円/スマートステラ:Android 2.2以降対応 480円(いずれも税込)

いつでもどこでも、好きな時間・場所の星空を再現できるプラネタリウムアプリ。星空のプロも愛用するPCソフト「ステラナビゲータ」のモバイル版で、本格的な機能を求める人にもおすすめ。渡辺さんも日ごろから活用しているそうです。

iステラ
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そもそも、オリオン座とはどんな星?

画像提供:なよろ市立天文台 きたすばる

オリオン座の観測シーズンや見つけ方について紹介してきましたが、ここからは、そもそもオリオン座とはどんな星座なのかについて解説していきます。

夜空の星と星をつなぎ、人や動物の姿になぞらえたものを「星座」と呼びます。国際天文学連合(IAU)によって定められた星座は、全部で88種類。そのなかでもオリオン座は、もっとも有名といってもいいほどよく知られた存在です。

知名度の理由は、ずばり「ひときわ目立つから」でしょう。オリオン座はおもに7つの星で構成され(※)、そのすべてが非常に明るい星。7つのうち2つが1等星、5つが2等星に分類されています。さらに配置も特徴的で、見た目にも印象に残りやすいこともポイントです。

画像: オリオン座のユニークな形は、砂時計や蝶ネクタイ、鼓にたとえられます 画像:iStock.com/angelinast

オリオン座のユニークな形は、砂時計や蝶ネクタイ、鼓にたとえられます
画像:iStock.com/angelinast

「88ある星座のなかでも、1等星を複数持つものはオリオン座、ケンタウルス座、みなみじゅうじ座の3種類しかありません。ケンタウルス座・みなみじゅうじ座は日本国内ではほとんど見られないこともあり、日本の夜空ではオリオン座がいちばんに目立つ星座であると言えるでしょう」(渡辺さん)

※:教科書などでは、肉眼でよく見える7つの星にフォーカスして「オリオン座」と捉えることが多いです。また、7つ以上の星で構成すると考える場合もあります。

オリオン座を構成する星

続いてはオリオン座を構成する7つの星について、詳しく見ていきましょう。

【1等星】

  • ベテルギウス
  • リゲル

【2等星】

  • ベラトリクス
  • サイフ
  • アルニタク
  • アルニラム
  • ミンタカ

特筆すべきは、1等星であるベテルギウスとリゲル。

画像1: オリオン座を構成する星

オリオン座の左上に位置するベテルギウスは「赤色超巨星(せきしょくちょうきょせい)」の一種。その名のとおり赤い色が特徴で、超新星爆発(※)を控えた「歳老いた星」なのだそう。おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオンとともに、冬の大三角系を描く星でもあります

※:星が寿命を迎え、大爆発して明るく輝く現象。

画像2: オリオン座を構成する星

右下にポジションをとるリゲルは、「青色超巨星(せいしょくちょうきょせい)」の一種で青白い色をしています。非常に明るく大きな星で、その表面温度は1万度を超えるそうです

またオリオン座といえば、中央に3つ均等に並んだアルニタク、アルニラム、ミンタカも目を引きます。

「ほぼ同じ色・明るさの星が、地球からだと等間隔に並んで見えます。この見え方はたいへん珍しく、オリオン座の形を印象付ける要因になっています」(渡辺さん)

【コラム】ベテルギウスはもうない?

画像2: 画像提供:なよろ市立天文台 きたすばる

画像提供:なよろ市立天文台 きたすばる

オリオン座を構成する星・ベテルギウスですが、「もうないのでは?」という話を聞いたことがある人もいるでしょう。

ベテルギウスは現在も夜空で観測できます。ただし、寿命が近い赤色超巨星であり、将来的に超新星爆発を起こすと予測されています。2020年の減光現象(※1)で「もう消滅したのでは?」との憶測が広まりましたが、原因は恒星(※2)表面の塵や冷却でした。爆発の時期は数千年以内と見積もられており、現段階でその兆候はありません。

ただし、私たちが見ているベテルギウスの光は約640年前のものなので、既に爆発している可能性も完全には否定できません。

ベテルギウスが爆発すると、オリオン座の形状に変化が生じ、星座としての見え方が変わると予測されます。その姿の変化は、大きな天文イベントとなるでしょう。

※1:星の光が弱まる現象。
※2:自ら光や熱を放つ星。

オリオン座の由来となった神話

画像: 画像:iStock.com/manpuku7

画像:iStock.com/manpuku7

さて、オリオン座のモデルになった「オリオン」とはなんなのでしょう? 星座の多くはギリシア神話が由来になっており、「オリオン」は海の神・ポセイドンの子どもです。オリオンは狩りの達人で、遠くからでも見える岩のような巨体を持っていたのだとか。

オリオンは月の女神・アルテミスと恋仲で、いずれは結婚するといわれていました。ところが、それをよく思わなかったのがアルテミスの兄・アポロン。弓の名手でもあった妹に「あの岩を射抜いてみよ」とそそのかし、アルテミスは見事やり遂げるのですが、その岩の正体はなんと、オリオンだったのです──。

オリオンの死を悲しんだアルテミスは大神ゼウスにお願いし、彼を星座にしてもらいました。冬になると月とオリオン座が近づいていきますが、これはアルテミスがオリオンに会いに来ているからなのだそうです。

「このほかにも、乱暴者だったオリオンをみかねた女神ヘーラが、彼をこらしめるためにサソリをけしかけたというお話もあります。サソリの毒には太刀打ちできず、オリオンは死んでしまいました。さそり座は夏の星座ですが、オリオン座は冬の星座。オリオンはサソリを怖がっていて、さそり座が空に昇っているあいだは出てこない、というわけです」(渡辺さん)

オリオン座周辺の美しい星雲にも注目

オリオン座を観察する際は、「星雲」にも注目したいところです。星雲とは、簡単に言うと宇宙空間に存在する巨大なガス。望遠鏡で覗くと、きらきらと輝く雲のように見える美しい天体です。

オリオン座の三つ星の南側に目をこらすと、もう一組、南北に3つ並ぶかすかな星の光が見られます。これらは「小三つ星」と呼ばれ、この付近にひろがるのが「オリオン大星雲」。数ある星雲のなかでももっとも明るく、地上から肉眼で確認できるほどです。

画像3: 画像提供:なよろ市立天文台 きたすばる

画像提供:なよろ市立天文台 きたすばる

「望遠鏡で観察すると、鳥が翼を広げたような形でとてもきれいです。オリオン大星雲は新しい星が生まれる現場でもあり、そのなかには生まれたばかりの赤ちゃん星がいるんですよ」(渡辺さん)

オリオン大星雲
画像提供:なよろ市立天文台 きたすばる

オリオン座の領域には、歳老いた星であるベテルギウスと、星の誕生を司る大星雲が共存している──なんともロマンチックです。ちなみに、ウルトラマンのふるさととして有名な「M78星雲」も、オリオン座のそばに実在するのだとか。

そのほかにも、燃え盛る炎のような「火炎星雲」、馬の姿を浮かび上がらせる「馬頭星雲」など、オリオン座は神秘的な星雲をいくつも抱えています。

「これらの写真は、望遠鏡と天体撮影専門のカメラを組み合わせて撮影したもの。一般的な一眼カメラですとここまで鮮明に写すのは難しいですが、赤っぽい色をした星雲領域を撮影することは十分に可能です。ぜひ挑戦して、オリオン座のまた違った一面を感じてみてください」(渡辺さん)

冬の星空観測は、まずはオリオン座から

「オリオン座は明るく華やかで、誰もが一度は目にしたことがある星座だと思います。同時に、非常に奥が深く飽きの来ない存在です」と渡辺さん。古い星に新しい星、多様な星雲と、さまざまな要素が詰まったオリオン座。知れば知るほど、いっそう魅力が感じられるはず。冬はオリオン座がもっとも見やすい季節です。輝く7つの星を見上げながら、宇宙の深遠を感じてみませんか?

※この記事の内容は2025年1月29日時点の情報をもとに制作しています

画像: オリオン座を見られる季節はいつ?見つけ方や特徴、由来なども解説

この記事の監修者

なよろ市立天文台 きたすばる

名寄高校で教諭をしていた木原秀雄氏の私設天文台を前身とする天文台。 北海道大学の所有する口径1.6m「ピリカ望遠鏡」は公開天文台としては日本で2番目の大きさを誇ります。

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