星の種類は、「恒星」とそれ以外に大きく分られる
夜空でキラキラと輝く星々も、見上げるとそこにある月も、そして私たちが暮らす地球も、すべてひっくるめて「星」と呼ばれます。そもそも、宇宙空間に存在する天体のうち、どのようなものを「星」と呼ぶのでしょうか。
渡辺さんによると、星の種類を分けるとしたら大きく2つ。自ら光る「恒星」とそれ以外、と考えることができるそうです。
- 恒星:核融合反応によって、自ら光や熱を発する天体
- それ以外の星:惑星、衛星、彗星など
それぞれ詳しく見ていきましょう。
恒星
核融合反応(※)によって莫大なエネルギーを生み出し、自ら光や熱を発生させる天体が恒星です。夜空にきらめく星の大半や、太陽がこの恒星にあたります。
※:小さい原子(例えば水素)が合体して、大きなエネルギーを作る現象。
月や彗星も夜空で光って見えますが、これは自ら生み出す光ではなく、太陽の光を反射しているもの。そのため、恒星ではありません。
恒星には、それぞれに明るさの程度を示す「等級」が定められています。等級は暗い順に6等級から1等級までで、等級がひとつあがるごとに明るさは約2.5倍になります。1等級の明るさは6等級の100倍が計算の基準となっています。
「もともと恒星の等級というのは、人の目で見られる最も明るい星を1等級、ギリギリ目視できる暗い星を6等級として、その差を100等分したのが始まりと言われています。その指標は時代によって変化もあるようですが、現在ではこと座の『ベガ』が等級の基準となる星の一つになっています」(渡辺さん)
惑星(太陽系惑星)
恒星の周りを公転する天体を「惑星」と呼びます。私たちが暮らす地球は、太陽の周りを公転する「太陽系惑星」です。
しかし、惑星を定義する要素はあいまいな部分も多く、恒星の周囲をまわっていれば必ず惑星である、とも言いきれないのだそう。なかなかにややこしいですが、宇宙にはまだはっきりしないことが多いのです。
「太陽のみならず、さまざまな恒星に惑星が存在すると考えられます。ですが太陽系外の惑星を地球から観測することは現状、非常に困難。実際にどんな太陽系外惑星が存在するかは、未知の領域です」(渡辺さん)
一方で、「太陽系惑星」については明確な定義が3つあります。
〈太陽系惑星の一覧〉
- 水星
- 金星
- 地球
- 火星
- 木星
- 土星
- 天王星
- 海王星
〈太陽系惑星の定義〉
- 太陽の周りを公転する
- 自己重力によってほぼ球体である
- その星の軌道付近に似たような星がない
これらの定義は、2006年の国際天文学連合(IAU)総会にて採用されたもので、意外にも近年定められたルールなのです1)。
準惑星
前述した太陽系惑星の定義を機に、それまで惑星扱いだった冥王星が「準惑星」となったことも、押さえておきたいポイントです。冥王星は、上の定義のうち3の「その星の軌道付近に似たような星がない」を満たすことができませんでした。
「もともと冥王星は、大きさが非常に小さかったり、軌道が斜めになっていたり、他の太陽系惑星と比べて異色であることが指摘されていたんです。そんな中、冥王星と同程度かそれ以上の大きさを持つ準惑星・エリスが見つかり、『冥王星が惑星であるなら、エリスも惑星として扱うべきか?』という議論が生じ、惑星の定義を明確にすべく、先ほど紹介した惑星の定義が制定されることになったのです」(渡辺さん)
では「準惑星」とは何なのかというと、太陽の周りを公転し、自らの重力でほぼ球形を保ち、軌道近くに似た天体が多数存在する、衛星ではない天体です。
〈代表的な準惑星〉
- 冥王星
- エリス
- ケレス
- ハウメア
- マケマケ
小惑星
関連して紹介しておきたいのが、「小惑星」です。小惑星は、主に火星と木星の間にある「小惑星帯」に存在する太陽系の天体で、太陽を公転し、形状が不規則なものが多いのが特徴です。
小惑星は、太陽系形成初期の残骸であり、地質活動が少ないため、原始的な物質を保持しています。これにより、惑星形成や太陽系の進化過程を解明する手がかりとなります。また、一部の小惑星には有機物や水が含まれ、地球の水や生命の起源を探る研究において重要です。探査機によるサンプルリターンも進み、小惑星研究が宇宙の謎解明に貢献しています。
〈代表的な小惑星〉
- イトカワ
- リュウグウ
- ケレス
- パラス
- ジュノー
- ベスタ
衛星
「衛星」は、惑星や小惑星などのまわりを公転する天体のことです。地球の衛星は月ひとつですが、太陽系惑星のなかには複数の衛星を持つものもあります。
「なかでもおもしろいのは木星と土星の衛星。観測技術の進歩によって、年々新しいものが見つかっているんですよ。2024年2月の国立天文台の発表によると、確定しているもので木星は72個、土星は66個。続々と発見されているので、今後もさらに増えていくはずです」(渡辺さん)
〈太陽系惑星の代表的な衛星〉
太陽系惑星 | 代表的な衛星 |
---|---|
地球 | 月 |
火星 | フォボス、ダイモス |
木星 | イオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト、アマルテア、ヒマリアなど |
土星 | タイタン、エンケラドス、ミマス、テチス、ディオネ、レア、ハイペリオン、イアペタスなど |
天王星 | アリエル、ウンブリエル、タイタニア、オベロン、ミランダなど |
海王星 | トリトン、ネレイド、ナイアド、タラッサ、デスピナなど |
【コラム】木星の衛星には生命が存在する可能性も…?
「火星に生命が存在する可能性は以前から指摘されていますが、木星の衛星・エウロパも今、注目されています」と渡辺さん。
火星と違って木星は太陽から距離があります。となると、寒い環境でも耐えられる生き物なのでしょうか…?
「実は、エウロパの内部は熱を持っていると考えられます。木星はとても大きな惑星のため、重力も非常に強い。巨大な重力の影響により、付近の衛星にグッと力がかかることで『潮汐力(ちょうせきりょく)』(※)が発生します。その結果、熱が発生すると言われています」(渡辺さん)
地球から遠く離れたエウロパにはどんな生命が息づいているのか、気になるところ。将来的には生命を探すための探査機を送り込む計画もあるのだそうです。
※:天体の重力の違いによる海水や地殻に変化を生じさせる力。
彗星
「彗星」は主成分の氷に加え、塵、岩石などで構成された天体。太陽系の外側をぐるりと取り囲む氷の天体の集まり「オールトの雲」が、その源だと言われています。長い年月をかけて太陽の周囲をまわっている彗星もあれば、一度太陽系を通りすぎると二度と戻ってこない、一方通行の彗星もあるそうです。
数十年〜数十万年に一度の周期で地球に接近すると、ほうきのように尾をひいた姿で夜空に現れる彗星。その様子から、「ほうき星」とも呼ばれます。
「彗星はよく“汚れた雪玉”にたとえられます。ギュっと握られて氷のようになった雪玉が、ガスや塵などに覆われたイメージですね。太陽に接近すると熱で氷が融け、その結果、尾を引いたように見えるのです」(渡辺さん)
〈有名な彗星〉
彗星 | 概要 |
---|---|
ハレー彗星 | 約76年周期で長楕円の軌道を描いて地球に接近。直近で観測されたのは1986年 |
ヘール・ボップ彗星 | 1997年に発見。公転周期は2500年で、次回地球に接近するのは西暦4500年ごろと言われている |
百武彗星 | 1996年に日本人のアマチュア天文家・百武裕司さんが発見。公転周期は約11万4千年 |
紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3) | 2024年9月ごろ地球に接近し、話題に。「一方通行」の彗星で、今後地球付近に戻ってくることはない |
星の色による違いとは?
さて、「恒星」の項で解説した通り、自ら光る星が恒星です。そのなかでも、星によって赤っぽかったり、白っぽかったり、光の色に違いがあることはご存じでしょうか。
「星の色は、その表面温度によって変化します。温度が高いほど青白い寒色系に、低いほど赤っぽい暖色系になります。また、まだ若い星は表面温度が高く、年老いた星は表面温度が低くなるのも特徴です」(渡辺さん)
〈6種類のスペクトル型と代表的な星〉
星の色の違いを専門的には「スペクトル型」といいます。表面温度が高い順にO型、B型、A型、F型、G型、M型に分けられ、青白色〜黄色〜赤色と変化していきます。なお恒星の一種である太陽は、表面温度6,000K(※)のG型。黄色っぽく見えます。
渡辺さんによると、O型の星はほとんど無いそう。青白い星といえばしし座のレグルスやおとめ座のスピカ、赤い星の代表格はオリオン座のベテルギウスやさそり座のアンタレスが挙げられます。
※:ケルビン。絶対温度の単位で、0K=-273.15℃。
【季節別】観測しやすい代表的な星
天体観測の際、目標となる星を決めておくといっそう観察しやすくなります。季節ごとにおすすめの、代表的な星を渡辺さんに聞きました。
春
- スピカ:春を代表する星のひとつ。おとめ座の1等星で、青白い色
- アークトゥルス:うしかい座の1等星。オレンジに近い色
「スピカ、アークトゥルスは北斗七星の延長線上にならぶ『春の大曲線』の一部であり、しし座の2等星デネボラとともに『春の大三角』を描く星でもあります」(渡辺さん)
夏
- デネブ:はくちょう座の1等星で、白色
「こと座のベガ、わし座のアルタイルとともに『夏の大三角形』を描きます。この3つの星は同じ1等星ですが、ベガとアルタイルが20光年程度と比較的地球のそばに位置する一方、デネブの距離は1,400光年以上。それだけ、デネブの発する光は非常に明るいと考えられます」(渡辺さん)
秋
- フォーマルハウト:みなみのうお座の1等星。青白い色
「みずがめ座とセットになった『みなみのうお座』の星。フォーマルハウトは秋の空で唯一の1等星で、南の空にぽつんと輝くのが見られます」(渡辺さん)
冬
- ベテルギウス:オリオン座の1等星。冬の夜空で非常に明るく目立つ赤い星
- シリウス:おおいぬ座の1等星で白色。全天で最も明るい恒星
「オリオン座自体が非常に目立つ星座で、赤い1等星のベテルギウスは簡単に見つけることができると思います。そしてオリオン座の斜め下でひときわ輝く星がシリウス。初心者にもわかりやすいのでぜひ探してみてください」(渡辺さん)
【関連記事】オリオン座を見られる季節はいつ?見つけ方や特徴、由来なども解説
ちなみに、渡辺さんの「推し」の星は…?
「夏の星座であるはくちょう座の3等星、アルビレオです。アルビレオは二重星で、オレンジの星と白い星の組み合わせになっています。望遠鏡で覗くと星がふたつ並んで見えて、非常にきれいなんですよ」(渡辺さん)
明るい1等星以外にも、魅力的な星はたくさんあるようです。みなさんも、「推し」の星を見つけてみては?
気になる星を見つけよう!観測のアドバイス
天体観測をするうえで、まず「どの星を観察するか」を事前に決めておくことが大切です。星座観察用のアプリや星座早見表を活用し、季節ごとに見やすい星をピックアップしておくといいでしょう。
また初心者にいちばんおすすめなのは、「天文台が開催する観望会(観察会)に参加することです」と渡辺さん。
「ただ星を眺めて終わりではなく、専門家の説明が聞けるのは大きなメリットです。星の見つけ方を教われば、次からは自分自身で探しやすくなります。『天文台』と聞くとなんだか難しそうなイメージを抱く方も多いかもしれませんが、まったくそんなことはありません! 科学館や博物館のような感覚で、ぜひ気軽に訪れてください」(渡辺さん)
観測の際、美しい星の様子をスマホで写真に収めるのもおすすめです。撮影のコツについては、以下の記事で解説しているので、ぜひ併せてチェックしてみてください。
【関連記事】スマホで美しい星空が撮れる!簡単撮影テクニックをプロカメラマンが伝授
星の種類を知れば、もっと星空観測が楽しくなる!
宇宙に浮かぶたくさんの星々。一説には、ひとつの銀河には1,000億から2,000億もの星があると言われています。さらには、銀河自体も無数に存在すると考えられ、現在の我々には測り知れない規模で、星が広がっていると言えるでしょう。
その種類や違いを知ることで、宇宙はもっとおもしろく、身近に感じられるはず。星空を見上げながら、個性豊かな星の世界に想いを馳せてみてください。
※この記事の内容は、2025年1月29日時点の情報をもとに制作しています