「Space Travelium TeNQ」とは?

「Space Travelium TeNQ」は、前身の「宇宙ミュージアムTeNQ」(2023年3月閉館)の意志を受け継ぎ、よりインタラクティブな体験を重視した新施設です。"宇宙旅行"をテーマに掲げ、VRによる月旅行、宇宙にまつわる音や香りなどを体感できる展示を通して、宇宙をリアルにたのしむことができます。
施設の総合監修・アドバイザーとして参画されているのは、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構教授の村山斉(むらやま ひとし)先生。
「宇宙は遠いところにあって、自分たちとは無縁だと思われる方が多いかもしれません。しかし、自分たちのルーツはもともと宇宙にあり、宇宙こそ自分たちの原点なのです」と語る村山先生は、展示や体験を通じて、より多くの人々に宇宙の魅力を伝えることを目指しています。
●総合監修・アドバイザー

東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構教授
村山 斉さん
1991年に東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。
東北大学などを経て、現職はカリフォルニア大学バークレー校マックアダムズ冠教授および東京大学 国際高等研究所 カブリ数物連携宇宙研究機構教授・浜松プロフェッサーを兼務。2019年東京大学特別教授の称号を受ける。西宮湯川記念賞(2002)、米国物理学会フェロー(2003)、フンボルト財団研究賞(2017)、米国科学振興協会(AAAS)フェロー(2022)、米国芸術科学アカデミー会員、日本学術会議連携会員。著書に、「宇宙は何でできているのか」幻冬舎(2010)、「宇宙はなぜ美しいのか」幻冬舎(2022)など、多数。
宇宙旅行への準備をしよう!「Space Terminal(スペースターミナル)」

JAXAの宇宙食やブルースーツのレプリカなど、宇宙関連の展示が並びます
施設に一歩足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのが「Space Terminal (スペースターミナル)」。宇宙港をテーマにつくられたというだけあって、一気に宇宙旅行気分が高まる雰囲気!
このエリアでは、まさに宇宙旅行に出発する旅行者のように、宇宙について体験して、遊びながら学ぶことができます。

村山先生が手がけた展示、宇宙のパノラマ。そもそも宇宙は何でできているのか、どうやって生まれたのかなどを特大パネルで知ることができます
画像提供:Space Travelium TeNQ

太陽系案内所には、太陽系の惑星の太陽からの距離や大きさなどが分かりやすく展示されています

見て、触れて、嗅いで。気付けば宇宙について詳しくなれる&好きになる仕掛けがたくさん!ちなみに、筆者が触れているのは、宇宙飛行士がISSで着用しているアンダーウェアの素材です
早速気になったのは、太陽系の天体上での重力をスーツケースの重さで体験できる展示。地球で10kgの荷物が、月では約1.7kg、木星では約23.7kgに感じられるなど、惑星によって異なる重力を体験できます。

地球では10kgのスーツケース。両手でも持ち上げるのが難しいですが……

同じスーツケースを、地球の6分の1と言われる月の重力で持ってみると、軽々と持ち上がります。「ふむふむ、月旅行には大荷物で行っても安心だな」と、リアルな想像をする筆者
その他にも、五感で宇宙を感じられる展示が多数。ボタンを押すと月面の香りを嗅ぐことができたり、火星の砂嵐の音を聴いたりすることができます。

「Space Travelium TeNQ」オリジナルの「月面の香り」を嗅ぐ筆者。ボタンを押すと、燻されたような、スモーキーな香りが漂います。ちなみに、アポロ17号クルーの宇宙飛行士ユージン・サーナン氏は、宇宙服に付着した月の砂(レゴリス)を嗅いで「使用済みの火薬のような匂い」と表現したそう。将来、月旅行で答え合わせする日がたのしみですね!

体を動かして重力を体感できるゲーム「ジタバタグラビティ」
とくにおすすめなのが、「Custom TeNQ Travel Book」。なんと、自分だけの宇宙旅行ガイドブックを作ることができるんです。これが、リアルな想像ができてすごくたのしい!
「宇宙ではきっと日本食食べたくなるよね」「私は宇宙空間でおしゃれにイタリアン食べたいな」などと、友達と言い合いながら選んでいく様子は、さながら週末の旅行の計画を立てているかのよう。宇宙旅行が遠い夢ではないことを実感させてくれます。
「Custom TeNQ Travel Book」の作り方は、「TeNQ式! 宇宙旅行ツアー診断」を行うことからスタート。「Space Travelium TeNQ」がセレクトした8種類の宇宙旅行から、自分にぴったりのツアーがわかります。

人生にロマンを追い求めている系の筆者は、Aの「太陽系を脱出!アルファ・ケンタウリ ツアー」がぴったりという結果に。アルファ・ケンタウリは太陽にもっとも近い恒星で、地球に似ている惑星があるらしいです
ぴったりのツアーがわかったら、表紙とツアーのカードを手に取ります。


そのあと、「もしも自分が宇宙旅行に行くなら?」という目線で、エリア内に設置された「宇宙食」「宇宙に持っていきたいもの」「宇宙船」のテーマからそれぞれ1枚ずつ、自分の好きなカードを選んでいきます。カードの裏には豆知識が書かれているので、ぜひ手に取って確かめてみてくださいね。
カードを4枚選んだら、ガイドブックの表紙を付けて、私だけのオリジナル宇宙旅行ガイドブックの完成! 宇宙旅行に行けるその日まで、このガイドブックを眺めて想像を膨らませたいと思います。

「Custom TeNQ Travel Book」は、宇宙旅行を自分事として興味をもってもらうにはどうしたらいいか…という発想から誕生したそうです
月旅行をVRで体験!「SORAVEL LINE(ソラベルライン)」

画像提供:Space Travelium TeNQ
いよいよ、施設の目玉とも言えるVR体験エリア「SORAVEL LINE」へ。未来の宇宙旅行を体感すべく、月旅行ツアー「THE MOON CRUISE」へ旅立ちます。VRは座った状態ではなく、自由に歩いてたのしめるので、よりリアルな体験ができます。
チェックインの流れ

3つの年代の中から好きな宇宙服を選び、顔写真を撮影してロケットへの搭乗手続きをします。

チェックイン時に登録する顔写真は、笑顔がおすすめ。この写真は単なる証明写真ではありません。月旅行中のアバターとして他人から見える顔になり、自撮りする際にもそのまま使用されるので、そのつもりで撮りましょう!

憧れの宇宙服を着ている自分に感激です!
HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を装着すれば、月旅行のスタートです!

VR体験中の様子
まずはロケットに乗って月周回軌道にある宇宙ステーションへ向かうのですが、「この瞬間がすでにたのしい!」ということを、筆者は声を大にして言いたいです。
東京の街並みがどんどん小さくなり、上昇していくのですが、垂直に空へ昇っていく際に重力がかかる感覚がすごくリアルなんです。本当に宇宙に向かって飛んでいるような気分を味わえて、スタートからテンションが上がること間違いなし!

ロケットから見える地球の姿は圧巻の一言。青く輝く惑星の姿は、私たちの住む星の美しさを改めて実感させてくれます
テンション高めに、宇宙ステーションへ到着。 ここから着陸船に乗り換えて月面へ降り立ちます。VR空間では自由に動き回ることができ、月を背景に記念撮影することもできます。
月面に初めて降りた感想は、「とても広く、静かで美しい場所」。不思議と心が落ち着き、しばし散歩をたのしむ筆者。VR空間であることはとっくに忘れ、月旅行をたのしみます。

記念撮影スポットでセルフィー。宇宙服だけでなく、グローブもカッコよかったので両手をあげてパシャリ。より宇宙旅行感が出たのではないでしょうか?
とくに印象的だったのは、ローバー(月面探査車)に乗っての月面周遊ツアーです。山道を走っているかのようにローバーに揺られることで、月面のデコボコ(クレーター)を感じることができました。
道中にはアポロ計画時代のアメリカ国旗やローバーを間近に見ることができます。より本物に近い体験を目指した工夫の1つだということです。

アポロ計画時代に使われたローバー

アポロ計画で立てられたアメリカ国旗が!
クライマックスとなる、月からの日食シーンも見逃せません。
地球から日食を見る場合には、地球から見える月と太陽の大きさはほぼ同じなので、月と太陽がぴったり重なって暗くなります。一方月から見える日食は、村山先生いわく「地球から見る日食とは全く異なる光景」なのだそう。
では、どのように見えるかというと……。
地球の影に太陽がすっぽりと入り、月面はぼんやりと赤い光に包まれます。

地球と太陽がだんだんと近づき……地球に覆われるように隠される太陽
村山先生によると、「月から見る日食の場合、地球は太陽の3倍ほどの大きさに見えるため、月はその陰に入ります。陰に入ったときには太陽のまぶしい光はこなくなりますから、その分夜空がもっときれいに明るく見えます」とのこと。
科学と現実に基づいたリアルな描写は圧巻で、この光景を見るために「Space Travelium TeNQ」へ足を運んでも損はない!と言い切れるほど、個人的に感動しました。

帰り際、日食を見ながら感動を噛み締めている同行者をパシャリ。この浸り具合からも感動が伝わるはず……
月旅行の感想を語り合おう! 「LOUNGE Q(ラウンジQ)」

VR体験の余韻に浸りながら訪れたいのが「LOUNGE Q」。
ここでは、日本一星空がキレイだと言われる長野県阿智村の星空や、宇宙空間に漂う星雲などの映像プログラムが投影されます。なかでも、村山先生がセレクトした映像プログラム「村山斉が見る宇宙」は、村山先生がナレーションをつとめる約20分間の音声ガイド(1回/500円)を聞きながら見るのがおすすめ。星が生まれたり、死んだりする瞬間の迫力ある映像は、宇宙のダイナミックな営みを実感させてくれます。

壁一面に映し出された、村山先生セレクトのプログラム「村山斉が見る宇宙」

カフェメニューも充実しており、宇宙や星をテーマにしたドリンクやスイーツが豊富に揃っています。おすすめは地球をイメージしたメロンパン。可愛い見た目は写真映えバッチリで、多くの人が注文するそう。

地球をモチーフにしたTeNQ地球メロンパン 400円(税込)

宇宙飛行士型のマシュマロをトッピングしたホワイトチョコレートチャイ(HOT/ICE)600円(税込)。写真はICE
VR体験後は「LOUNGE Q」で休憩しながら、月旅行の感想を語り合ってはいかがでしょうか。
企画展示で広がる宇宙への想像力
企画展示エリアでは、現在「レゴⓇスペース展 in TeNQ」(〜2025年5月18日)を開催中。2024年に宇宙をテーマにした製品を多数発売し話題となったレゴジャパン株式会社とのコラボレーション企画です。

宇宙飛行士コーナーでは、「レゴⓇクリエイター3in1 宇宙飛行士」を100体以上展示した間違い探しコーナーを展開
NASAに関連した製品をはじめ、宇宙をテーマにした製品約20アイテムを一挙に展示。「レゴⓇテクニックNASA Apollo 月面探査車-LRV」や「レゴⓇアイコンNASA アルテミススペース・ローンチ・システム」など、見応えのある精巧なモデルを間近で見ることができます。

「レゴⓇアート 天の川銀河」。3,000ピース以上のレゴⓇブロックとパーツが星のように重なり合い、宇宙の美しさを生き生きと表現しています
宇宙への夢を形にできるレゴブロックならではの、創造性豊かな企画展となっています。実物の精巧な再現から芸術的な表現まで、レゴブロックを通して宇宙の多様な魅力に触れてみてはいかがでしょうか。
また同展以降も、宇宙に関連するさまざまなテーマの企画展が開催予定とのことなので、チェックしてみてくださいね。
宇宙の誕生に迫る!オンライン講座に注目

画像提供:Space Travelium TeNQ
施設での体験をより深めたい方には、村山斉先生によるオンライン講座「Space Travelium TeNQ 特別講義」(全6回)がおすすめです。第1回「宇宙の美しさと謎」を皮切りに、太陽系や銀河、さらには宇宙の始まりまで、壮大なスケールで宇宙の謎に迫ります。
「宇宙には美しい画像がたくさんありますが、その背後にある物語を知ることで、より深く宇宙を理解できるはずです。たとえば、私たちが見ている星々は、じつはダイナミックに生まれたり、死んだりしています。そして、その死んだ星のかけらが私たち自身なのです」と村山先生。私たちの体を構成する物質のルーツが、遠い宇宙での壮大なドラマにあることを、わかりやすく伝えてくれます。
講義では、生命が存在できる環境という観点から惑星の話を始め、銀河系の進化、さらには宇宙の謎に迫る「ダークマター」まで、幅広いテーマを扱う予定。「銀河同士が衝突して合併する様子や、その過程で新しい星が生まれる話など、宇宙の壮大なドラマを知ることで、私たちの存在の意味も見えてくるはずです」と村山先生は期待を込めます。
「Space Travelium TeNQ 特別講義」(全6回)
対象年齢:小学生以上
料金:当日:2,000円/回
再配信:1,000円/回
※日程は公式サイトをご確認ください
※再配信は各日1回のみ視聴可能
購入方法ほか詳細は公式サイトをご確認ください。
https://www.tokyo-dome.co.jp/tenq/inquiry/
宇宙ビジネスの実験場「ProtoYard」登場!

“宇宙”をフィールドに展開するプロダクトや、企業・団体などの挑戦を紹介する展示エリア「サテライトギャラリー」。エリアの一部では、株式会社DigitalBlastによる宇宙ビジネスの可能性を探求する実験の場「ProtoYard(プロトヤード)」があります。ProtoYardという名称には、宇宙をベースに多様な人々が共に創り出す未来のコンテンツを実証(=Prototyping)するためのフィールド(=Yard)という意味が込められています。
第一弾の企画として、「Space Travelium TeNQ」の公式アンバサダーの新人宇宙飛行士VTuber「月女神イチ(アルテミス イチ)」のインタラクティブな展示と、ファッションブランド「Blone(ブローン)」のショールームが設置されています。
展示エリアには「月女神イチ」の配信ブースが登場。デジタル空間から飛び出した月女神イチと、来場者が直接対話をたのしめる仕掛けとなっています。

タイミングが合えば、リアルタイムで月女神イチの配信が聞けます(不在時は録画した動画が流れます)
さらに、宇宙・人間・デジタル・電脳世界をモチーフにしたファッションブランド「Blone」のショールームも併設。アイテムを実際に手に取って、宇宙をファッションの視点からも体験することができます。

オリジナルグッズが充実!「TeNQ 宇宙ストア」
お土産選びは「TeNQ 宇宙ストア」で。イラストレーター「かずのこ」さんとのコラボレーショングッズや、「月女神イチ」のオリジナルグッズなど、宇宙旅行の思い出を持ち帰ることができます。

「浮き星」は、もち米(あられ)に砂糖蜜をかけた甘いお菓子。星のような可愛い形と、お湯に浮かせて飲む特徴からこの名前になったそう

新人宇宙飛行士VTuber「月女神イチ」のオリジナルグッズも豊富!アクリルスタンド、キーホルダー、缶バッチなどが揃います
オリジナルグッズの他に、アウトドア・カジュアルブランド「CHUMS(チャムス)」のグッズも揃う「TeNQ 宇宙ストア」。宇宙飛行士モチーフのCHUMSのマスコットキャラクター・ブービーバードがプリントされたマグカップやトートバックなど、ここでしか買えないアイテムが揃っています。

あなたのブービーバードと一緒に月を!カンパーイ

スタッフ着用のブルースーツ(非売品)
体感型施設で宇宙を身近に感じよう!
「宇宙は決して遠い存在ではありません」と村山先生が語るように、VR技術を駆使した体験や五感で宇宙を感じる展示を通じて、宇宙をより身近に感じることができる「Space Travelium TeNQ」。
近い将来、実現するかもしれない本物の宇宙旅行。その日が来るまで、ここで一足早く宇宙への旅をたのしんでみてはいかがでしょうか。
Space Travelium TeNQ
住所
東京都文京区後楽1-3-61 東京ドームシティ 黄色いビル6F
営業時間
平日11:00~21:00、土日祝10:00~21:00(最終入館20:00)
定休日
なし、整備休館あり
利用料金
一般:平日2,500円 土日祝・特定日3,000円、高校生・中学生:1,800円、小学生:1,300円、未就学児(小学生未満3歳まで):800円、2歳以下:無料
※特定日は公式サイトの営業日カレンダーを参照
※7歳未満の子どもは、VRコンテンツの体験不可
※この記事の内容は2025年2月21日時点の情報をもとに制作しています