2022年4月、東京海上日動は会社を挙げての一大プロジェクト「宇宙プロジェクト」を始動しました。そこから2年を経て、2024年3月に宇宙メディア『SpaceMate』がスタート。現在、ますます「宇宙」に本気で取り組んでいる最中です。この記事では、そんな「宇宙プロジェクト」とはどんなものなのか、発足までのストーリーや現在の取り組み、目指す未来をご紹介します。

東京海上日動が進める「宇宙プロジェクト」とは

画像: 東京海上日動が進める「宇宙プロジェクト」とは

「宇宙プロジェクト」は、2022年4月1日に始動した東京海上日動の大規模プロジェクトです。宇宙産業における保険商品の開発・提供やリスクコンサルティングを通して、業界全体の新たな取り組みや社会課題の解決を支援し、宇宙産業の成長・発展に貢献することを目指しています。

発足のきっかけは“宇宙時代”の到来

じつは1970年代から約50年にわたり、人工衛星の運用やロケット打上げ時の宇宙保険、リスクコンサルティングなどを展開してきた東京海上日動。なぜこのタイミングで改めて、「宇宙」に関する一大プロジェクトを始めたのか。そのきっかけには、宇宙産業の市場規模の拡大が大きく関係しています。

画像: 世界の宇宙産業の市場規模予測1)

世界の宇宙産業の市場規模予測1)

1960年頃からスタートした宇宙産業は、長年NASAやJAXAなどの公共事業のみが携わることのできる領域でした。しかし2010年代からは、民間企業が参入できるようなしくみが出来上がり、その後一気に市場規模が拡大したのです。

画像: 日本の宇宙産業の市場規模予測2)

日本の宇宙産業の市場規模予測2)

内閣府が2017年に発表した「宇宙産業ビジョン2030」2)によると、国内の宇宙産業の市場規模も、2016年の約1.2兆円から、2030年には2倍以上の約2.5兆円まで成長することが予測されています。こうした動きの中で、東京海上日動にも宇宙保険や宇宙関連企業のコンサルティングをはじめとした、さまざまな宇宙関連のニーズが増えてきました。そこで、約50年で培ってきたノウハウを宇宙業界全体の成長のために役立てるべく、「宇宙プロジェクト」を立ち上げたのです。

社内横断チームでそれぞれの知見を結集

前述のように、宇宙産業の成長に伴い、宇宙関連企業からの依頼はますます増えています。宇宙保険はもちろん、そのほかにもコンサルティングや衛星データの活用など、その内容は多岐にわたります。

そこで「宇宙プロジェクト」では、増加するお客様からのニーズに対応するために、社内横断的にチームが集められました。宇宙保険をおもに担当していた航空旅行・AL宇宙をはじめ、マーケット戦略部、そしてビジネスデザイン部などのデジタル部門まで、東京海上日動のみならず、東京海上ホールディングスからも、総勢20名以上のメンバーが集まり、それぞれの知識とアイディアを集約させています。

画像: 社内横断チームでそれぞれの知見を結集

「宇宙プロジェクト」を発足したことで、これまで宇宙保険の専門部門が中心となって“安心・安全”を提供してきた領域に、デジタル部門のような新しいアプローチを組み合わせ、新たな商品やソリューションを生み出すことが可能になったのです。

「宇宙プロジェクト」を構成する3つの領域

宇宙産業の成長・発展に貢献する、と一口に言っても、その内容はさまざまです。「宇宙プロジェクト」では、現在大きく3つの領域に取り組んでいます。

画像: Copyright(c)2022 Tokio Marine & Nichido Fire, Inc.

Copyright(c)2022 Tokio Marine & Nichido Fire, Inc.

①宇宙業界全体を支援し成長を目指す「宇宙市場の拡大」

1つ目は「宇宙市場の拡大」です。急激に変化と進化が同時多発的に起きている宇宙市場において、民間企業へのコンサルティングや支援を通して、国内の宇宙産業の進展に貢献することを目指しています。

②宇宙データを活用しよりよい社会を目指す「社会課題解決」

2つ目は「社会課題解決」。宇宙、そして地上でのリスクソリューションの知見を活かして、気候変動や自然災害への対策、そしてインフラや物流などの社会課題まで、衛星データ・宇宙空間の活用による解決を目指しています。

③新たな安心と安全の実現を目指す「中長期目線での保険会社の役割」

3つ目は「中長期目線での保険会社の役割」です。宇宙が今より身近になる未来に向けて、2050年までに想定されるメガトレンド※1を踏まえながら、保険の領域にとどまらない新規事業の展開を目指しています。

※1 2050年までに予想される気候変動や人口増加・高齢化、資源不足などの時代の大きな流れ

保険からデブリ対策まで。現在進行しているおもな取り組み

2024年4月から3年目に入る「宇宙プロジェクト」。これまでに実施してきた施策の中から、現在取り組み中の一部をご紹介します。

衛星データの活用

画像: 衛星データの活用

衛星データの活用分野では、人工衛星から発信されるさまざまなデータを分析することにより、気候変動対策や防災・減災、そして災害予測精度の向上などを行っています。

(1)水災保険金支払いの迅速化

衛星開発や画像解析を行うフィンランドの会社ICEYEと資本業務提携を結び、水災が発生した際の迅速な保険金支払いに取り組んでいます3)。衛星が取得した高精度の地球観測データを利用することで、大規模な水災が発生した際に、被害発生から最短数時間で浸水範囲と浸水高を把握することが可能になっています。また、地盤変化や施設の状態変化などのモニタリングを通じて事故の予兆を検知し、アラートを発信するサービスの開発も進めています。

(2)赤潮予兆サービス

広島大学、アクセルスペース、ハイドロ総合技術研究所と共同で、赤潮の発生予測に関する研究開発を実施しています4)。衛星から取得する環境データと最先端のAI、環境データの将来予測シミュレーターを組み合わせることで、赤潮の発生が事前にわかる通知サービスや、赤潮による損害の未然防止・軽減サービスの開発を進めています。

(3)風災リスク診断ソリューション

国際航業と協業し、台風や突風などの風災リスクを診断する、企業向けのサービスを展開しています5)。国際航業が所有する超高解像度航空写真と、東京海上日動が保有する風災に関する事故データを組み合わせることで、風災事故に繋がりやすい老朽箇所などを特定し、風災リスクの削減に貢献しています。

宇宙旅行者向け保険の提供

画像: 宇宙旅行者向け保険の提供

多くの民間人が宇宙旅行を楽しむ時代に向けて、2024年4月から宇宙旅行者向けの保険を提供。宇宙への出発日から地上に帰還した日までの死亡・後遺障害の補償をはじめ、搭乗機の打上げ日の前、および帰還後の保険期間中に発生したけがや疾病によって、治療が必要となった場合などの補償を行います。

月保険の開発

画像: 月保険の開発

民間初の月面探索を目指す株式会社ダイモンの「YAOKI」プロジェクトを支援するために、月面探査専用の「月保険」を新たに開発6)。企業の新規事業に伴う未知のリスクを共有、サポートすることで、今までになかった商品・サービスを展開しています。

宇宙デブリ対策

画像: 宇宙デブリ対策

宇宙デブリの発生防止装置・軌道上試験装置を開発している会社BULLと協業し、装置の事業性の検討やリスクマネジメントの分野を支援。また、持続可能な宇宙環境に向けた取り組みも行っています7)

宇宙メディア『SpaceMate(スペースメイト)』

画像: 宇宙メディア『SpaceMate(スペースメイト)』

きたる宇宙時代に向けて、今よりもっと「宇宙を身近に」感じてもらえるようにスタートした、東京海上日動のオウンドメディアです。宇宙旅行に関する最新情報のほか、宇宙業界の方への特別インタビュー、宇宙を体験できるツアーやスポット情報などを発信し、「宇宙に想いをはせる人の一番近くにいるメディア」を目指しています。

さまざまな企業・団体と協力して宇宙を盛り上げる

前述で紹介した取り組み以外にも、東京海上日動はさまざまな宇宙関連企業・団体と協力し、宇宙産業に携わっています。

〈東京海上日動が協業している企業・団体の具体例〉

主な取り組み内容協業企業・団体
衛星データ活用衛星から取得するデータを活用した新たな宇宙保険商品・サービスの開発、次世代小型衛星事業の推進8)アクセルスペース
地球低軌道の事業化国際宇宙ステーション(ISS)への補給ミッションや、ISS退役後の宇宙ステーションの打上げなど、地球低軌道の事業化と新たな産業創出、社会課題の解決9)Sierra Space
宇宙リスクソリューション宇宙開発におけるリスクの定量評価、リスク低減コンサルティング、保険サービスの提供、リスクマネジメント手法の提供など、民間企業向けの宇宙リスクソリューション事業10)JAXA
画像: JAXAとの宇宙リスクソリューション事業の概要 ©JAXA/東京海上日動

JAXAとの宇宙リスクソリューション事業の概要 ©JAXA/東京海上日動

東京海上日動が「宇宙プロジェクト」で目指す未来

画像: 東京海上日動が「宇宙プロジェクト」で目指す未来

すでにいくつかの取り組みがスタートしている「宇宙プロジェクト」ですが、東京海上日動がこのプロジェクトを通して目指す未来は、より安全でより安心できる社会です。

衛星データを活用することで、自然災害などによる地上の不安をできるだけ減らしていくとともに、新たな保険やソリューションの提供を通じて安心して宇宙に行ける環境を整えることで、人々の夢を叶えていく──。そうすることで、ワクワクできるような新しい時代を迎えるための支えになりたいと考えています。

そのためにはまず、国内の宇宙産業をさらに発展させていくことが大切です。東京海上日動では、今後の「宇宙プロジェクト」の活動の中で国際市場との関係をより深めていき、日本発の企業やテクノロジーが世界で活躍できる土壌づくりをしていきます。それと同時に、さまざまな宇宙関連企業との協業を通して、これまでの保険商品やサービスに捉われることなく、あらゆる方面から宇宙産業の発展をサポートしていきます。

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