日本のロケット発射場は4箇所!一覧でご紹介
私たちの暮らす日本にも、ロケット発射場はあります。鹿児島県の内之浦と種子島、北海道大樹町、和歌山県串本町の4箇所です。JAXAが運営する国立の施設から近年誕生した民営の施設まで、それぞれの発射場の特徴をご紹介します。
JAXA 種子島宇宙センター|鹿児島県
1969年に設立された日本最大のロケット発射場で、総面積は970万平方メートル。日本の宇宙開発における、人工衛星打上げの中心的な役割を担う場所です。鹿児島県・種子島の東南端に位置し、青々とした海原に臨むロケーションから「世界一美しいロケット発射場」ともいわれています。
センター内には、「大型ロケット発射場」「衛星組立棟」「衛星フェアリング組立棟」などの設備があり、ロケットの組み立てから整備・点検、打上げ、その後の追跡まで一連の作業が行われます。
毎年、施設の特別公開を実施。また、併設されている宇宙科学技術館では、センターの取り組みを過去・現在・未来にわたって学ぶことができます。ロケットの部品などに直接触れたり、館内シアターで打上げを間近で見上げる擬似体験ができたりと、全身で宇宙を感じることができるでしょう。
JAXA 内之浦宇宙空間観測所|鹿児島県
鹿児島県肝付町に位置する内之浦宇宙空間観測所。ここでは固体燃料を使ったロケット「イプシロンロケット」が打上げられます。加えて観測ロケットの発射場も備え、1962年以来、400機以上のロケット、40機以上の人工衛星・探査機を打上げています。日本初の人工衛星である「おおすみ」や、2010年に地球へ帰還した「はやぶさ」も、ここで打上げられました。
ロケット発射場は平地に建設されることがほとんどですが、ここは世界的にも珍しく、山地に建設されているのが特徴です。この地を選んだのは、「日本の宇宙開発の父」ともいわれる糸川英夫氏だそう。町内には、氏の銅像も建てられています。
毎年、特別公開イベントを実施しているほか、併設の宇宙科学資料館ではロケットや科学衛星、打上げ施設の設備を展示。科学観測機器等のモデルやパネル、実際に使用した試作・試験品などを見ることができます。
北海道スペースポート(HOSPO)|北海道
北海道大樹町が所有する「シェアするスペースポート(宇宙港)」。民間にひらかれた商業宇宙港であり、世界中の民間企業、大学研究機関などが自由に使うことができるロケット発射場です。アジアの拠点となるスペースポートを目指して、2021年より本格始動しました。
垂直打上げロケットの実験・打上げ設備を持ち、各種試験から打上げまでをトータルで行うことができます。また、宇宙旅行やP2P(高速2地点間有人輸送)などで使われる「スペースプレーン(※)」の試験にも使用できる滑走路も備えられています。
国内民間企業単独で初めて宇宙空間に到達したインターステラテクノロジズ株式会社のロケット「MOMO」が打上げられたのも、この場所です。
ロケットを打上げる方向である東と南(後述)に海が広がり、広大な土地を有することなどから、「世界トップクラスの宇宙港の適地」ともいわれている大樹町。2025年には人工衛星の打上げに対応した発射場Launch Complex -1(LC-1)が完成する予定です。宇宙開発に民間企業が続々と参入する昨今、注目のロケット発射場の一つであり、大樹町とSPACE COTAN株式会社が運営しています。
※:スペースプレーンとは、航空機と同じように自力で滑走し、離着陸および大気圏離脱・突入できる宇宙船のこと。
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スペースポート紀伊|和歌山県
スペースポート紀伊は、民間宇宙関連企業・スペースワンが建設したロケット発射場です。太平洋に面した本州最南端・和歌山県串本町に位置し、2021年に完成。日本初の民間ロケット発射場となりました。
2024年3月には独自開発した小型ロケット「カイロス」初号機を打上げ。残念ながら打上げ後にロケットが異常を検知し、搭載していた人工衛星の軌道投入はかないませんでした。しかしながら当日の会見でスペースワン社長・豊田正和氏は「“失敗”という言葉は使わない。一つひとつの試みの中に新しいデータがあり、経験がある。それらは全て今後の新しい挑戦に向けての糧と考えている」と語ったことも話題になっています。
宇宙開発の未来に向けて、スペースポート紀伊の挑戦は続きます。現在、カイロス2号機の打上げを準備中とのことです。
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ロケット発射場の立地はどう決める?選ばれる地理条件とは
ロケット発射場はどんな場所にも建設できるわけではありません。ロケットの特性や安全性を考慮し、大きく2つの地理的条件が重要となります。
①赤道に近い
ロケットに搭載する人工衛星を、宇宙空間でどの軌道に乗せるかにより、発射場に適した場所は変わります。その中で安定した需要があるのが、赤道上空約3万6,000kmの高さを西から東へまわる静止軌道(※)です。
赤道上(赤道に近いところ)でない場所からロケットを打上げる場合、打上げ後に赤道上空の軌道まで移動する必要がありますが、はじめからなるべく赤道に近い位置でロケットを打上げることで、軌道修正にかかる燃料を節約することができるのです。
また、ロケットの打上げには地球の自転を利用しています。自転のスピードは赤道に近づくにつれ速くなるため、赤道に近い場所ほど、この運動エネルギーをロケットに加算することが可能になります1)2)。
以上の理由から、ロケット発射場は赤道に近い場所が有利とされており、日本国内の施設の多くが南側に位置しているのもこのためだと考えられます。
※:衛星の周期が地球の自転周期と同じになり、地上から見ると衛星が常に静止しているように見える軌道のこと。
②東側および南北いずれかにひらけた土地
万が一ロケットの打上げに失敗した場合、近隣に民家などがあれば、落下物による事故を引き起こしかねません。したがって、発射場の周囲の一定範囲は無人にしなければならないという決まりがあります。国内ではJAXAが落下物の落下範囲を予測し、安全が確保される経路を設計したうえで、打上げが行われています。海に面したロケット発射場が多いのは、このためです。
〈図〉ロケット落下物の落下予想図区域 3)
前述したとおり、赤道上空に衛星を飛ばす場合、ロケットは地球の自転を活用して打上げられますが、地球の自転方向は西から東です。つまり、多くのロケットも東に向かって打上げられます。それゆえ、進行方向である東側が無人になる場所が選ばれるのです。
なお、地球観測衛星においては地球全体をまわるよう、南北いずれかの方向に打上げる場合もあります。地球の北極と南極上空を通る、ほぼ縦に回る軌道(極軌道)に投入され、日本では南向きに打上げられます。そのため国内の発射場では、東と南にひらけた場所がロケット発射場に適しています。
日本国内でロケットの打上げを見学できる場所
生で見る打上げの迫力は、映像の比になりません。一度は、ロケット打上げの瞬間を見学してみたいものです。
種子島宇宙センター、内之浦宇宙空間観測所、スペースポート紀伊では、今後もロケット打上げが計画されています。それぞれ近隣自治体によってロケット打上げ見学場が整備されており、打上げ当日はその様子を見学することが可能です。詳しくご紹介しましょう。
なお、見学には事前予約や事前抽選が必要な場合もあります。ロケットの打上げ日程にあわせて各自治体などから詳細が発表されますので、公式サイトをチェックしておくのがおすすめです。
種子島宇宙センター(鹿児島県南種子町)のロケット打上げ見学場マップ
【ロケット打上げ見学場】恵美之江展望公園
種子島宇宙センターでの打上げ当日は、打上げ地点を中心に半径3km以内が立ち入り禁止となります。恵美之江展望公園はその範囲のすぐ外側に位置し、もっともロケット発射場から近い見学場です。迫力満点で非常に人気が高く、入場は事前抽選制となっています。
また、ふるさと納税の返礼品として、寄附者については打上げ見学優先席を設けています。
恵美之江展望公園
住所
鹿児島県熊毛郡南種子町平山1352-27
電話
0997-26-1111(南種子町宇宙開発推進協力会事務局/企画課 企画開発係内)
備考
入場は事前抽選制。詳細は南種子町の公式サイトをご確認ください。
【ロケット打上げ見学場】宇宙ヶ丘公園
宇宙ヶ丘公園では、打上げ地点を遮ることなく見ることができます。ふだんは町民憩いの場となっており、上皇陛下(当時は皇太子殿下)が1983年の歌会始(御題「島」)でお詠みになられた「大空に打上げせまるロケットは 島の南の果に立ちたり」を刻んだ石碑にも注目です。
宇宙ヶ丘公園
住所
鹿児島県熊毛郡南種子町中之下1937-37
電話
0997-26-1111(南種子町宇宙開発推進協力会事務局/企画課 企画開発係内)
【ロケット打上げ見学場】長谷展望公園
長谷展望公園はもっとも多くの見学者が集まる場所で、会場全体が緩やかに傾斜しており、どこからでもロケットが見やすいのがポイント。臨時駐車場を含め、約400台まで車を停めることができ、種子島宇宙センター近隣の見学場で最大の収容数になっています。
こちらも、ふるさと納税の返礼品として、寄附者には打ち上げ見学優先席を設けています。
長谷展望公園
住所
鹿児島県熊毛郡南種子町平山4680-11
電話
0997-26-1111(南種子町宇宙開発推進協力会事務局/企画課 企画開発係内)
【ロケット打上げ見学場】南種子町営陸上競技場(前之峯グランド)
南種子町営陸上競技場(前之峯グランド)は市街地にもっとも近い場所にあるロケット打上げ見学場です。打上げ地点がちょうど山に隠れてしまうため、リフトオフ(打上げ)の瞬間を見ることは難しいものの、緑豊かな山々のあいだからロケットが飛び立つ姿は圧巻。アクセスがしやすく、近隣にコンビニや飲食店がある便利さも魅力です。
南種子町営陸上競技場(前之峯グランド)
住所
鹿児島県熊毛郡南種子町中之上2260
電話
0997-26-1111(南種子町宇宙開発推進協力会事務局/企画課 企画開発係内)
内之浦宇宙空間観測所(鹿児島県肝付町)のロケット打上げ見学場マップ
【ロケット打上げ見学場】IHIスペースポート内之浦(宮原ロケット見学場)
IHIスペースポート内之浦(宮原ロケット見学場)は、イプシロンロケットの発射台が直接見える唯一の見学場です。眼前にイプシロンロケット発射装置、直径34mのパラボラアンテナが一列に並んで見えるのも魅力的。
スペースポート紀伊(和歌山県串本町)のロケット打上げ見学場マップ
【ロケット打上げ見学場】田原海水浴場
串本町側のロケット打上げ見学場は、田原海水浴場に設置されます。波の少ない静かなビーチで、発射場から南西に約2kmと近く、打上げの迫力を間近に体験することができます。入場は有料の事前申込制。自家用車の制限などさまざまなルールがあるため、事前に告知サイトをしっかりと確認しておきましょう。
【ロケット打上げ見学場】旧浦神小学校
那智勝浦町側に位置するロケット打上げ見学場は、廃校となった小学校を活用したもの。スペースポート紀伊からは北東に約2kmの距離で、こちらもかなりの臨場感を味わうことができます。2024年3月に行われたカイロス初号機の見学ツアーでは、校舎の屋上に登って見学することもできました。田原海水浴場と同様、入場は有料の事前申し込み制。事前にルールの確認を忘れずに。
気軽に楽しむならツアーもおすすめ
日本旅行の「sola旅クラブ」では、宇宙を感じるさまざまなツアーやイベントを実施しています。
その中でも、ロケット発射のスケジュールにあわせて企画される「ロケット打上げ応援ツアー」は、宇宙教室の実施などにより、初めての人でも安心して楽しめる人気ツアーとなっています。種子島宇宙センターや内之浦宇宙空間観測所で実施される打上げのほか、スペースポート紀伊や北海道スペースポートなどで実施される打上げでも随時ツアーが開催されています。
気になる方は、ぜひ以下の関連記事をチェックしてください。
【関連記事】一生モノの感動ツアーを届ける。宇宙への架け橋を目指す日本旅行の思い
sola旅クラブ
【世界の主なロケット発射場】代表的な2施設をチェック
ここまで日本国内のロケット発射場について解説してきましたが、世界各地にもロケット発射場が存在します。代表的な2つをご紹介しましょう。
ケネディ宇宙センター|アメリカ
1968年に設立。フロリダ州に位置するケネディ宇宙センターは、NASAのフィールドセンターのなかでもっとも有名な施設といっても過言ではないでしょう。アメリカでのすべての有人飛行はここから行われており、1969年に人類初の月面着陸を果たしたアポロ11号や、1981年に打上げられた初のスペースシャトルも、ケネディ宇宙センターで発射されています。
ギアナ宇宙センター|フランス領ギアナ
フランス国立宇宙センターが1964年に設立したロケット発射場で、南米のフランス領・ギアナのクールーに位置します。欧州宇宙機関(ESA)が開発したアリアンシリーズの打上げ場所として知られるほか、EUの全地球測位衛星システム(GNSS)「ガリレオ」を乗せたソユーズロケットも、この場所で打上げられました。
日本のロケット発射場は、宇宙旅行の玄関口にも!
世界中で進められている宇宙開発。近年では国内外で民間の宇宙ビジネスも拡大しており、さらなるフェーズを迎えています。宇宙旅行が身近になりつつある時代、宇宙への玄関口である「宇宙港」の開発も進んでおり、ロケット発射場だけでなく、宇宙港としての役割を担う施設も。今後は人々が宇宙旅行へ旅立つ様子も、さまざまな場所で見られるようになるかもしれません。
※この記事の内容は2024年8月14日時点の情報を元に制作しています